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映画「はりぼて」

映画『はりぼて』予告編

【感想】★★★★☆(75点)

概要

富山市議会を舞台に、議員達の脈々と続いてきた政務活動費の不正支出や、議員報酬の不可解な増額などにローカル局チューリップテレビが切り込んでいくドキュメンタリー映画だ。人間くさいやり取りが面白いので、政治に興味がなくても楽しめるだろうと思う。人間関係の覗き見感覚で観てもいいんじゃないだろうか。

感想

いやぁ、面白かった。今年は映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」も面白かったし、書籍「女帝」も面白かった。ドキュメンタリーの豊作だったように思う。このポンポコしたテーマ曲をずっと聞いていたい。リアルは喜劇だ。実態は笑ってばかりでもいられないが・・・

実は私は、前職が市役所職員で、一時期、議会事務局へ出向していた時期もある。そこでの仕事は、次第書(市議会の議事進行書)の準備から視察や議長への随行など多岐に渡った。もちろん、政務活動費の報告書も確認していた。勤務していた自治体は小規模だったため、本映画の舞台である富山市議会の議員報酬の高さと、政務活動費の多さには単純に驚いた。

全編を通して「分かる分かる」だったが、非常にリアルだった部分を2点シェアしたい。

とてもリアルだった点

議員活動の中身のなさと答弁の空虚さ。これだ。私は女性だが、映画でもあったように、田舎の市議会という場所に女性はほぼいない。議員であれ、市の執行幹部であれ、議会事務局職員であれ、同じだ。究極のマイノリティ。ただでさえ、議員を相手にするため、振る舞いにかなり神経を遣う職場であるが、そこに女性として加わることのややこしさは語れば何時間でも語れるが、愚痴はしょうもないので省く。

オッサンだらけの市議会で繰り返される答弁は、マジでしょうもなかった。職員として本会議や委員会の出席が必須となるが、ここに長時間臨席するのは、かなりの忍耐を要求される。まず眠い。どうしようもなく眠い。公務員としてそれじゃ駄目だが、どうしたって中身のないやり取りが多い。とりあえず簡易的な議事録を作成しながらいつも耐えていた。自分の人生の時間を無駄にしているような気がいつもしていた。

国会議員の答弁を聞いていても分かると思うが、まともな文章を自分の言葉で話せる政治家というのは、実はかなり少ない。弱小市で人材不足の市議会議員ともなれば「てにをは」さえおぼつかない。最初から市長部局と打ち合わせ済みのような、持ち上げ質疑と答弁を聞かされ続ける。

このような仕事を通じて、私は公務員として働く意義をいつまでも見出だせなかったし、この国の政治に絶望し加速主義を切望することにも繋がった。一応、まともな議員も5%ぐらいいたことは加えておく。ただ、少数派だったし政治力学において影響力を持たず、存在がなんとなく救いだったぐらいだ。

次に、公務員倫理についてだ。映画では、情報公開請求に対して、請求を受けた部署が、他部署である議会事務局に情報を漏らし、さらにはそれを追求を受ける可能性がある議員にまで伝えるというシーンがあった。この守秘義務違反は、私の勤めた田舎市役所では頻繁に起こっていたように思う。名指しして申し訳ないが、口さがないこのような態度は、主にホモソーシャルにおける小便コミュニケーションや煙草コミュニケーションで起こっているように推察する。また、情報を握った場合、それ自体が一介職員のパワーになることも多い。つまらない村社会だからだ。気に入られたい人間が、情報を持ってすり寄っていく。そんな姿をよく見た。

噂話好きなのは女性のイメージがあると思うが、単純にこういう大きな案件の話は女性まで降りてこないことが多い。私も最後になんとなく聞かされることが多かった。自分から首を突っ込めばまた違うかもしれないが、私はそういった人間関係的なウェットなやり方ができないし、正直興味がない。

仮にあなたが、とある部署とやり取りしているつもりでも、公務員には頻繁に異動があり、過去の記憶や人間関係と共に他部署へ移っていくことを知っておいてもいいと思う。裏で繋がっている可能性を考えて動いたほうが賢いだろう。何か不可解な事が起こったら、言質を取ってそこを突けばいいだけだ。

「是」では決してない。私もこのようなことは認められないが、現実としてそういう実態があることを伝えておきたいだけだ。

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