レビュー

書籍「思考の教室」/戸田山 和久

【書評】★★★★☆(75点)

この本をお薦めしたい方

中学生~高校生にお薦めしたい。筆者の対象は「高校生~新入大学生、そしてよく考えたい大人」となっており、勿論いい大人の私が読んでも発見は多かったが、できるだけ柔らかい段階で一読しておくと良いと思う。全般的に若者に語りかける口調となっているため、大人が読むと少しくどく感じるかもしれない。私が親なら買い与えた本だろうと思う。

内容について

語彙の獲得方法から、思考方法、文章の構成と論理思考、学問についてなど多岐に渡り、うまく紐解いてくれている。いわゆるテクニックを解説するような底の浅いビジネス書の類ではないため、安心して読める。特に、昨今の政権などから発せられる論理が成立していない文章について、その見分け方などを整然と示してくれているので、分類に役立つ。

例えば、政治芸人・橋下などのワイドショー等での発言は、その勢いや抑揚に飲まれそうになり、正確性を判断できなくなることが多いが、そのような発言の弱い部分、また、隠そうとしている部分なども解説してくれている。議論における作法やズルさのようなものを細かく解説してくれているので、そういうシーンを分析・理解するのに役立ちそうだ。

少し前に「ご飯論法」が話題となったが、その延長のような記述もあり、このあたりが個人的には大変興味深かった。その細やかな分類を日常の分析にリアルタイムで使用できるかと言われると自信がないが、前提知識として入れておくことで、まやかしに騙されにくく、冷静に分析できる自分に近づけるかもしれない。

実は本書とは偶然の出会いだ。定期期にちょっかいを出す図書館で、「借りてほしい」感をこれ見よがしに出しながら飾られていたので、借りてみただけだ。結果よい本だったので、なんだかそんな図書館員さんがいらっしゃることが可愛くて嬉しくなってしまった。

練習問題!もあるので、読了にはマトモに取り組むと結構時間がかかるかもしれない。ズボラの私は、自分が苦手であるという分野の練習問題だけチョロリとやった。

一回で入りきる内容量でもないので、あなたが若いなら購入の方がいいかもしれない。読み返す度に発見はありそうだ。心理学への多少の興味や、文章を書いたことがあるなどの経験によってかなり読み進むスピードが異なりそうなので、そこは個人で判断してみてほしい。