【感想】★★★・・・★(点数をつけるのも心苦しい。リテラシーとして必見)
概要
新疆ウイグル自治区で続いている、中国政府による迫害を追うドキュメンタリー。ここで語られる強制収容所の様子と、家族と意図的に引き離す政策からは、中国共産党の底恐ろしさが伝わってくる。
また、私達消費者はサプライチェーンを介して、間接的にこの迫害に加担している可能性がある。本編も45分と短いので、リテラシーとして是非視聴してほしい。
感想
私は歴史リテラシーがない上に記憶力が悪いので、すぐ混乱してしまう。実のところ、中国政府の少数民族政策についても、その流れを理解できていないというのが正直なところだ。衣装の美しさ目当てで中国の時代劇ドラマを見ることがたまにあるが、後宮に集められた女性の民族性がヒエラルキーに影響しているのを発見して、何やら相当複雑な背景があるのか・・・ということだけは感じていた。
ウイグルの強制収容所については少し前に話題になっていたため耳にしたことがあったが、どこか遠い世界のように感じていた。しかし今回この映画を観て、改めて知ることや感じたことが多く、やはり、そろそろ複雑なウイグル問題について学ぶ時期が来ているなと感じた。
そして、ウイグル問題については日本語WEBにまともな情報がないことも、ここで共有しておきたい。このあたりを詳しく解説している記事はこちら。できたら、多くの方と学びを共有できればと思う。
さて、映画について話を戻したい。家族と引き離された家族のコメントがことごとく重い。どの方も言葉を詰まらせ、飲み込んだ絶望を、もう一度吐き出すように苦しげに喉を震わせる。
引き離されてオーストラリアで暮らす妹に、姉が強制収容所から命がけでメッセージを送ってくる。。明日をもしれぬなかで、まだ闘おうとする力がどこから湧いてくるのだろう、私にその勇気があるだろうか・・・そんなことを考えた。
中国政府は、ウイグル自治区のイスラム教徒を迫害している。具体的には、イスラム文化圏への渡航歴から唐突に逮捕者を選定し、配偶者やその他の家族には24時間以内の国外退去を命じている。逮捕の根拠から対応からめちゃくちゃだ。逮捕者に子供がいる場合は、子供を養護施設へ隔離し、イスラム文化を継承させないために洗脳教育を行う。ここが、想像を超えてくる部分だ。
これほど、人の尊厳と心を折る方法を思いつけることが恐ろしい。国外退去を命じられオーストラリアで息を潜めるように生きる彼らは、強制収容所で暮らす家族とビデオ通話でしか会えない。中国政府は巧みだ。人質をとることで絶望を与え、形式上は自由なはずの彼らも精神の檻に入れて苦痛を与えている。
コロナ禍での中国政府のテック対応が話題となった。監視社会は今後、ある程度は許容する方向へ進むだろうと思う。全てはバランスだ。しかし、巨大な実験場となっているウイグルでのそれは、すでにその倫理的側面さえ大きく超えている。彼らは血液型などの生体データさえ入手し、ウイグル族を見分けることを目的とした顔認証技術が既に実用段階に入っている。顔認証技術についてはこれだけではない。彼らは、喜怒哀楽の表情についても分析し始めている。
何が起こるか、アホな私でも想像できる。不満分子を先手で摘もうとするだろう。明確な罪状がないそれは恐怖を拡散し、さらに支配力を強めるだろう。人はそのうち、妙な表情で暮らすようになる。そう、北朝鮮のように。
また、強制収容所での労働を巨大企業が利用していることも忘れてはならない。中国政府は、強制収容所の者を雇用するにあたり助成金を、そして、無償での工場施設利用特権などを謳い、多国籍企業と巨大資本を巻き込もうとしている。これは、問題の本質を隠し、複雑に利権関係を絡ませることで長期化を目指している。
昨今、サプライチェーンのトレーサビリティがよく話題になる。製品がどこから来ているかを確認できるように、企業から消費者へ情報をしっかりと提供しているかということだ。消費者として、搾取や人権迫害に加担していないかは気をつけていきたいところだ。ウイグル族迫害に間接的に加担している企業が劇中で明らかになっている。誰でも一度は利用したことがあるだろう企業だ。是非その目で確認してほしい。
この映画からは考えさせられることが多く、書ききれない。どうか視聴して考えてみてほしい。また、次の映画もとても大切なので、併せて視聴していただけたらと思う。
併せて、こちらも是非視聴してほしい。
映画「人狩り・ 中国の違法臓器売買」