リアリティショー

バチェロレッテ2 #01

はじめに

今回は、六本木クラス&epi01-03視聴後のレビューです。

ひとまず香川照之について1000文字ぐらい語りたいが、脱落者が出そうなのでグッとこらえてバチェロレッテのレビューにその情熱をぶつけてみたい。今回も脱線しかしないので、あらゆる期待を捨て、甘いものでも用意して心穏やかに読んでほしい。リラックスリラックス。

今回もナイナイがMCを務めているが、キッパリこれはミスキャストだろう。りゅうちぇる辺りを引っ張ってくるか、せめてカップルで副音声実況をしてもらえれば、かなり盛り上がるんじゃないだろうか。私はもうオッサンではなくアップデート後の男性の声が聞きたい。

過去のバチェラー・バチェロレッテ記事はこちらから

どこまでがリアルなんだろう

私はエンタメ界と全く縁がないし、こういう番組がどういう手順で制作されているのかさっぱり分からないのだが、一番気になっているのは、どこまで本人の意志なんだろうというところだ。例えば、それぞれの出演者A,B,Cには、それぞれの役割A’,B’,C’みたいな、自分の一部をデフォルメした、自分自身とは少しズレた人格の役柄が割り当てられていて、それが己と親しい存在だからこそ微妙な演技力で乗り切れる、みたいな世界観なんだろうかと思っていたりする。

こんなことを思うのは、カメラアングルの切り替えから考えると、絶対撮影止めてるよなぁと思うことが多々あるのだ。そんな「アクション」「カット」の連続で、どこまで熱量を保つことができるのかは疑わしい。

というのも、衝撃の72分ワンカット撮影で制作された映画「ウトヤ島、7月22日」を視聴したとき、69人が死亡したノルウェー最悪の銃乱射事件という内容に加えて、始まりから終わりまで一切途切れず、さながら舞台を360度展開にしたような映像に驚いたからだ。当然役者にはマイクが付いていないのだが、全編声を後で入れるなんてことは無さそうだし、それなら音声担当が見切れて必ず横にいるのだろうと思う。知識がないなりに撮影の様子を想像すると、相当細かくカメラや役者の動きを制御しているだろうことが伺え、これを観ながら考えていると、スタッフに取り囲まれているだろうバチェラーの撮影方法と演者の心情とは・・・と疑問が湧いてくる。いやはや、わからん。わからん方が夢があっていいのかもしれん。

AがA’を演じていると仮定して

さて、バチェラー4以降、自社の宣伝を狙った金満主義をもはや隠そうともしないシリーズなのだから、視聴者だけが一喜一憂してまんまと乗せられているのも癪に障る。我々は少し俯瞰で独自の楽しみも見つけてみたい。出演者がもれなく売名目的なのは当然なので織り込んだ上で、彼らが目立ちたい以外に「何を表現しに来ているか」を探ってみたい。最果ての当ブログに到着したあなたは、きっと変わり者だ。だからこそ提案してみたい。多角的解釈を全員で試してみようぞ。

婦警の話「お前が悪い」

さて、転げるように脱線の速度を上げていきたい。私には小学生のときテレビで見て忘れられないスピーチがある。とある婦警が言っていた。「お前が悪いと指した指は、一つは相手を、残りは自分を指している」

花の蜜を吸うのが趣味だったアホな小学生は衝撃を受けた。「マジか・・・。」アホは素直なので、すんなりこれがインストールされた。あまりに低レベルな例えで何だが、これが自分の客観の芽生えであり、クリティカル・シンキング(批判的思考)の始まりだったと思う。

テクニカル的に思考法を学んだわけでもないし、それ系の本を意外と手に取らないので完全に我流だが、私の脳内はいつもこんな感じだ。

まず、何かを感じる。そして、「これはこうかな」と仮説を立てる。この辺りまではすごく適当にやるし、この段階での自分の考えなんて全く信用していない。ただ、起点となる0ポイントを作るのが目的なだけだ。

そこまで来たら、まず180度立場を変えて、仮説に反論し、ボロクソに叩いてみる。ここで仮説が修正されたり、別物が出てきたりする。その後、0~180度の隙間を埋めていくように、友人Aなら何というか、属性Bならどう思うか、などとそれぞれの仮説をたて、それなりに360度埋めた後に、自分の意見を暫定で決める。

クリティカル・シンキングの結果を高めるには、自分のなかにあらゆる指標・人格・属性サンプルを持つことが強みになる。同質性の高い者とばかりつるんでいると、この力が弱まるのでこの機会に一緒に磨いてみたい。だって、次回の放送までなんか暇じゃないか。週末鑑賞用に買ったビールを水曜日には飲んでしまうのを私は知っている。つまり、当ブログなんてものは思考の叩き台として消費しつつ独自で何かを発見できたなら、我々は人間ではなく、番組そのものをまっとうに消費できたと言えるじゃないか。

客観視の楽しさ

よくリアリティショーは低俗だと言われ、特に意識高い系には忌み嫌われている。私も自分の下衆な好奇心は認めるし隠しはしないが、そう毛嫌いするものでもないだろうと思う。この番組を「誰と誰がくっついた」的な好奇心だけで見ている者は案外少なく、本質的な面白さは人間観察と事象の客観視だろうと思う。つまり、とある事象に関して、あーだこーだ言い合うのが楽しいコンテンツなのだ。

例えば、演者の性格や言動にどこか自分と似たものを感じた場合は、他者はどんな感想を抱くのだろうかと知りたくなる。意外なところに魅力を感じているコメントを見ると、新たな発見になって嬉しかったり、否定的なコメントを見ると「そう見えることもあるのか」と内省に繋がる。あくまで演者に対するコメントであり過度に同一視することがないため、批判もすんなり受け入れ自分自身を省みやすい。こういう部分がウケているのではないかと思う。年齢が上がってくると実感するのだが、面と向かって欠点を指摘してもらえる機会は貴重だ。当ブログが、そんな眼差しの交錯を感じられる場所になれたら、そんな素敵なことはない。

人物雑感

出演者のアンケート・PVでの失言を加味すると、既に選択肢が半減しているバチェロレッテからは、相変わらず罰ゲーム臭が漂う。一度でいいから人権感覚がアップデートされた、失言しない成熟男性17人のバチェロレッテが見てみたい。そう思うのはヘルジャパンではやはり高望みだろうか。

過度に一般化するつもりはないが、女性は支配を受けやすい身体構造上、男性全般が薄っすら嫌いだ。たまに苦手ではない人が現れ、そこから運が良ければ性愛に発展する。彼女はきっと選び切ると思うが、いないと思ってしまうのも普通にあり得ることだと思う。どうせ他人事なんだし、少なくとも16人は恋愛市場に再放流されるのだから、気楽に手ぐすねを引きつつ見守ろうではないか。とりあえず、ウェルカムバック!早瀬!

尾﨑美紀氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

レッドカーペットに登場した彼女は真珠のように輝いている。柔らかく光を反射する肌の照りがうっとりする程美しい。絶妙な長さのサイドの髪は様々な表情を引き出し、可愛らしく揺れるアクセサリーを見るのも楽しい。猛暑にムシャクシャしてワカメ並に刈り上げてしまった私は「あの髪型素敵やなぁ」と羨ましく見ていた。

等身大の彼女が朗らかに振る舞う様子は、ともすれば縁遠く感じる起業や企業経営さえも、どこか自分と地続きなのだと感じさせてくれる。「鎧を脱ぐ」という彼女の言葉も、社会で闘う女性の誰もが一度は悩むところで、一緒にその場所に降り立ち、共に歩んでくれるような素敵なテーマだ。

彼女は2代目バチェロレッテという、必ず比較されるプレッシャーを腹に飲み込んで出演を果たした。その時点で、彼女は既に多くの女性や将来起業するかもしれない蕾たちに大きな勇気を与えている。そんな彼女がどうか幸福を感じ、納得のいく決断ができる機会であってほしい。

楚々として儚げな彼女を見ていてふと思った。女性が男性17人からロックオンされ囲まれる状況は、そもそも彼女にとってリラックスして恋愛できる状況なのだろうかと。epi03まで放送されたが、人数が半減したこの辺りから、やっと彼女は一息つけるのではないだろうか。

私は女性が4人しかいなかった理系学科出身なのだが、一度だけ実習室で女性1人になってしまったことがあり、この時数十人の男性に囲まれとても怖かったのを覚えている。普段友人関係である彼らから暴力を受けるなど想像もできなかったが、そういう問題ではない。もうこれは動物の本能的な部分が反応したとしか思えない。この中で最弱の生き物であるという根源的で払拭できない恐怖であった。

今回彼女を取り囲む男性の中には、高身長、マッチョ系も多く、彼女と目線を合わせることに留意せず、座って話そうとしない者も多い。彼女は相手を不快にさせないようにずっと笑顔をキープしているが、この笑顔こそが彼女の鎧であるとも思う。

彼女は一応ずっと笑っているのだが、時折笑い声の語尾に混ざる「フフフ」音は、場の空気を和ませ補うために彼女が足している「気遣い」であり、悲鳴のようにも聞こえる。「ありがとうございますぅう~」と語尾を上げ伸ばしながらの発声や身体を揺らす笑いはおそらく演技・接待だろう。

日本女性は先進国中で最も声が高いと言われている。アニメと家父長制社会における媚文化の影響だろうと思うが、バチェロレッテも例外ではない。特筆すべきは、彼女が男性達と話しているときと、インタビューに答えるときのトーン差だ。インタビューに答える彼女の声はとても低い。人間もひとつの楽器であるので、一般的に彼女のように高身長であるほど声は低くなる。バックヤードでの声が彼女の素だろう。インタビュアーが女性なのかもしれない。また、彼女は法螺貝や長過ぎるチョコ製作期間にツッコんだりと、お茶目な一面がある。声の高低とツッコミの有無が彼女の鎧を見抜くポイントになりそうだ。

epi02のカクテルパーティで男性二人からツーショットを迫られるというシーンがあったが、「ひぇ~~」とアホな感想しか出てこず、やっぱ先着順のマクファーレン氏じゃないかと思った私などは、「2人で決めてほしい」という彼女の差配に、上に立つ者の風格と頭の良さを感じた。

彼女は、BBQ中の長谷川惠一氏の地味な活動や、サップ中のジェイデン氏の自由っぷりなどに気づいていたり、結構周りを見ている。長女的気質とでも言うのか、常に全体の俯瞰と自分が相手にどう映るかという客観、そして適切なタイミングでしっかり仕切りや主張を入れられる女性だ。彼女の鎧がどこから来たのかと考えてみたとき、それは幼い頃からの長女という立場や、女性故に逆風も強い経済界で、それを物ともせず進み、仲間を率いる力強い背中を見せなければならないというプレッシャーがあるのだろうと思う。彼女の鎧は自分を守るというよりは、「仲間を守る」という優しさや強い意志から強化されてきたように思え、私はそこが好きだ。

タイムマシンに乗せる

PVで自ら話していたように、彼女は所々大げさに喜んだり笑ったりしているのだろう。そんな接待を続ける彼女に対して、男性は急速に距離を詰めて気安く接している。ちょっとしんどそうだなぁと心配してしまうが、スマートな彼女の思惑は実は違うのではないかとも思っている。

受け入れるという優しさは、実は相手の本質を引き出す最強のテクニックだ。自分で言うのも何だが、こう見えて私は人に冷たい故にそこそこ優しい。好きなことを邪魔されない限りは結構穏やかで、日常生活における些事はどうでもいいのだ。そんな私が自己主張もあまりせずに男性と付き合うとどうなるかというと、ダメンズは速攻で胡座をかきだす。そのような態度は私が引き出したとも言えるが、無いものは引き出せない。こんなとき「出やがったな」と思いつつ、しばらく観察してサンプルを採りつつ別れのタイミングを測る。

早い段階で諌めていれば結果が変わるという意見もあるだろうとは思うが、私はズボラだ。注意されなければ、他者への尊重を保てないような人間は相手にしたくない。

ダメンズの観察では、まずは感情ケアをサボりつつ、相手が話しているときに自分の爪を見つめてみたり、後退しそうな髪の生え際に視線を固定してみたり、相槌に手を抜く。人間とは面白いもので、普段接待を受けすぎている者は、2~3度相手が望むタイミングの相槌を無言でフル無視するだけで焦りだす。マジで性格悪いなと自分でも思うのだが、この相槌コントロールによる掌握力は凄い。そして、これを男性上司に利用されていることにも思い至る。男性と女性の相槌の差は観察してみると結構エグい。バチェロレッテも例外ではない。人間も動物なので、直感的な体格差が上下関係に繋がることは多いが、次点で影響するのが、視線の上下と、「聞いています。同意しています」という尻尾を振る行為「相槌」だと思う。

私は、本質を引き出す行為を「タイムマシンに乗せる」と表現している。健全な付き合いだった場合は、馴れ合いが生じた5年後、10年後にやっと発露するであろう態度を短期間でグッと引き出す。自分の持つマイナスの力は、いい感じに表現しなければやっていられない。現にバチェロレッテの笑顔にノックアウトされたナイナイ岡村氏などは、彼女の優しい受け入れ態勢こそが全女性が目指すべき感じの良さとでも言いたそうな称賛ぶりで、ミソジニーを溢れさせている。男性はなぜここまで、女性に受け入れられないこと、批判されることを恐れているのか一度じっくり考えてみた方がよい。

さて、ヒロインの優しい笑顔に引き込まれて、全男性がホイホイとタイムマシンに乗り込んだ。超スピードで展開されるであろう本質の露見を、我々はじっくりと鑑賞しようではないか。

長谷川惠一氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

全体を俯瞰して動く様子が、その重責を常に担ってきたバチェロレッテからすると頼もしく映るのかもしれない。ランタンデートではしゃぐ彼女はとてもリラックスしていて可愛らしく、素朴で言葉を飾らない彼との相性は良さそうだ。

また、多くの人間が「こんな短期間で驚くかもしれないけれど・・・」と枕詞をつけながら、一気に「好き」と表現してしまうことが多いバチェラーシリーズにおいて、正直に今はそのタイミングではないと告げ、いずれ発せられるであろう「好き」という言葉に重みを持たせたのは素晴らしい。視聴者もたいてい「盛り上がるのえらい早いな」と思っているのである。

彼の一番いいところ=素朴で飾らない態度

中道理央也氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

彼はかなり印象が変わったうちの一人だ。写真では「大人の色気も出てきました」風の決め顔だが、動くと彼はやはり幼い。

SHELLYさんがやたら彼のコミュニケーション能力を褒めていたが、私は真逆の感想だ。

まずは断りづらい状況下での「お姫様抱っこ」リクエストだ。いやいやいや、ドレスや着物を着用した場合、女性はトイレを避けるために水分コントロールさえする。着崩れするかもしれない初対面でのお姫様抱っこは迷惑以外の何者でもない。

続いて、epi01における「パパになりたい」はアンケートに続く最悪のノーテンキ発言だ。無邪気でいいな。お前が産め。

とどのつまりは、epi02のカクテルパーティにおける謎の割り込みだ。マクファーレン氏の予約を知らなかったのかもしれないが、「蹴散らすんで」という不穏な言葉にホスト役であるバチェロレッテは困惑するだろうし、男らしさを履き違えているような気がする。じっと彼女を見つめて手を差し出す様子からは、彼がずっとルックスを武器にしかける短期決戦の恋愛を重ねてきたことを裏付けているように思う。彼の発する言葉は何もかもが辿々しく、まともなコミュニケーションを積み上げて交際に至ったことはあるのだろうか。個人的には、会社の顔である彼女の横に並び立つには、彼の知性では物足りないように思う。

彼の一番いいところ=一生懸命挑戦しようとしているところ

小出翔太氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

これは個人的な偏見なのだが、彼のような雄感の強い顔の造作が私は少し苦手だ。魅力的だと思う反面、怖さも感じる。そしてPVにおけるポージングのウザさは歴代1位だとも思っていたのだが、本編で彼に対する印象は180度変わった。

彼はとにかく目端が利いている。ジェイデン氏が一気飲みしたグラスにおかわりを注ぎながらも、自分自身はとっくに飲み干してしまった空のグラスを持ち続け、所在なさげにウロウロして結局チャンスがつかめない。そんな彼だが他人のためならサッと動ける。epi02でバチェロレッテとのツーショットを取り合っていた場面では、「今の間にちょっとだけ」と漁夫の利的なカットインをして空気を一気に和ませた。これは職業的な部分もあるのだろうが、すごいセンスだ。不穏な気配を察して遠くからやって来る彼の姿がとてもカッコいい。

そして、epi02でバチェロレッテとディナーをとりながらしっとり話す様子がとても良かった。彼の優しく落ち着いたトーンの会話は、こちらの思いを受け止めてくれるような包容力がある。焦りもなく、ゆっくりと穏やかに自分の考えを話す彼とは、いつまでもいつまでも、ゆっくりとラリーを続けていけるような気がして、今回のメンバーで唯一話してみたい人物だ。

また、彼は「自分に責任がある」「自分は受け取った側」という表現をよくする。去り際に残した、仲間を讃え、バチェロレッテの選択は間違っていないと勇気づける彼の言葉に宿る優しさが深く響いた。

「鎧を脱ぐ」にまつわるやり取りだが、彼は思考を重ねた上で、「鎧はきっといつか自然に脱げる日が来る」と希望を与え、「だから今は無理に鎧を脱ごうとせずありのままで」と伝えたのだと思うが、バチェロレッテ自身は「自分で殻を破る」ことに意義を見出していて、そこがすれ違ってしまったのだろうなと思う。個人的にはすごく惜しい。一度発言したことを反芻して思考を掘り返す人間はそう多くはない。そして、自分と違う角度の思考を持つ人間は貴重だ。私なら必ず友人としてキープする。

まぁ、彼はモッテモテ人種だと思うので、恋愛市場に再放流されたことは多くの女性が喜んでいることだろう。ありがとう、バチェロレッテ!ワッショイ!

彼の一番いいところ=優しく包み込むような話し方

田村一将氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

ヘイトを集めるサンドバッグ・ボランティアなのかと思うほどの化石っぷりに配信前は辟易していたが、始まってみると意外といいオジっぷりで健闘している。

終始ソフトな印象で、旅の疲れを癒やすために消え物のアロマオイルを差し入れるところは気が利いていて流石だ。佐藤駿氏が差し出した販促目当ての薔薇アクセなんぞ、誰も初対面では受け取りたくない。

33歳の彼が、なぜこんなにもオジぶりたがるのかはちょっと謎だが、一周回って段々好きになってきたから不思議だ。落ち着いた彼の様子は男性陣を和ませつつ会話をリードし、水をこぼす茶目っ気もあって、ボート乗員には真っ先に呼ばれるほどの人気ぶりだ。くるくると変わる素直な表情が見ていてとても楽しい。

バチェロレッテやメンバーの行動についての洞察も冷静で的を射ており、彼の頭の良さが伺える。彼はいつ恋愛スイッチが入るんだろうなぁ。まぁ、いつもニコニコしていて、一番この旅を楽しんでそうだから、どうでもいいか。

彼の一番いいところ=そつのなさ

ジェイデン トア マクスウェル氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

出会いの場での自作カードによる演出は素敵だったが、それがピークというか、出番がある割にこれといった印象がない。

epi03での「愛するのが怖い」のくだりは大切な話だと思うので、今後二人で腰を据えてじっくり話せる機会があるといいなと思う。

彼の一番いいところ=素直さ

佐藤駿氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

さて、体幹と言えばカナダのトルドー首相を思い出す。世界の重鎮が集まる会場で、アルファベットの大文字Aを模したように仁王立ちするトルドーは、腰位置の重量感と背中の張りが惚れ惚れするほどカッコいい体幹の持ち主だ。

対して佐藤駿氏は、美しく跪く姿勢などから隠れ体幹ではないかと私は疑っている。確認したいので、ちょっと立ち木のポーズを60秒ほどキープしてほしい。

彼は5~6年前の落合陽一を思わせる雰囲気の持ち主だが、色使いだけではなく姿勢の悪さにも共通点がある。落合陽一もかなり姿勢が悪いが、腹回りに不思議な安定感がある。彼らはきっと土台がしっかりした隠れ体幹だと思う。トルドーが両足にしっかりと体重を乗せて立つエアロビクス的なタイプだとすると、隠れ体幹は複数の関節を折り曲げて不思議なバランスを作り出し、その抜け感が独特の色気を放つ舞踏的なタイプだ。そんな彼の所作は不思議な陰影を作り出し印象に残る。軽やかにパールネックレスを身にまとうセンスも面白い。

そんな無敵の立ち姿を持つ彼だが、話すとその朴訥さと幼さが気になり、表情からは何を考えているかが分かりにくい。

「素を出せ」論争について。まぁ、薄々視聴者も「そりゃまだ接待してるし、完全に素ではないな」とは思っているし、彼の言い分も分からないではないのだが、本人にそれを言ってしまうと、もはや最良の結果は得られないというところに、彼の愚かさがある。

素を出していないお客様対応をされると悲しいが、これはもう自分が引き出す努力をするしかないし、「出して」とお願いして出てくるものでもなければ、相性の限界を超えられない時は潔く諦めるしかないのだ。

彼の一番いいところ=自己演出力

阿部大輔氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

事前アンケートで女性のヘイトを集めきった彼だが、こちらも港区と同様に意外と健闘し強い魅力を放っている。

しかし、カクテルパーティで繰り返された強引なカットインはウザさしかなく、靴デコレーションや他のサプライズ準備に関しても、どこか独善的で自分の世界に閉じこもっている印象を受ける。

また、衆目を集めるなかで手紙が読まれたシーンは最高にシュールだったが、気持ちが伝わる素敵な手紙だったと思う。できれば予行演習しているところは見たくなかったが。

彼の一番いいところ=相手を包み込もうとするところ

雲母翔太氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

自己陶酔・侍枠だと思いながら登場シーンを見守っていたが、まさかの登場にバチェラーシリーズ最高に爆笑した。とっさに巻き戻して3回くらいリピートしたが、何度でも爆笑できた。epi01-26分あたりの映像は、今後も元気がなくなってしょんぼりした時に見直そうと思う。宝物なんだろうか、真剣な顔で法螺貝を吹く青年と目が泳ぐバチェロレッテ。音があんまり出なかったと落ち込む青年、面白すぎる。

それにしても、法螺貝って楽器だったんだなぁ。彼女の素の笑いも引き出せていたし、花火のように一瞬で散ったけど、その輝きは本当に綺羅星みたいだったよ。落ち着いた声と話し方、ニコっと笑うのも素敵だったし、ピアノとセッションするぐらいまでは見守っていたかった。

彼の一番いいところ=法螺貝、素朴な可愛らしさ

平山大氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

マイペースでぶっきらぼう。こんなに会話が雑でもタクシードライバーは務まるんだなぁ。

彼の一番いいところ=マイペースなところ

加藤友哉氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

彼は時折、彼独自の世界の言葉を使う。彼にとってそれは馴染みが深いのかもしれないが、そこまで一般的とは言えない用語を重ねる姿からは、共通語で話し、相手との快適なゾーンを探す気持ちがないのだろうかと思ってしまう。

そんな彼の印象的なシーンは、epi03における飛び込みだ。最終的に飛び込んだのは凄い勇気だったとは思うが、個人的には「無理せずに、はよ飛ぶか止めるかして」と思っていた。男性だからといって勇敢である必要はないし、無理だと思うなら止めることこそが勇気だ。腰が気になるから飛ばないと言ったジェイデン氏の肩を彼は優しく叩いて励ましていた。彼の素敵なところはそれだけで充分伝わっている。

彼の一番いいところ=苦手なことに挑戦したところ

早瀬恭氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

「話の腰を折ってもいいですか」とやんわり声をかけつつ跪く様子は、小出氏と並ぶ最高のカットインだ。

例えるならば、彼は憧れの先輩枠といったところだろうか。ほのかな好意がずっと残って、彼の出席を聞きつけて同窓会の参加を決める女性は結構いそうだ。一番キレイな自分で会いたいと、同窓会までひとりファッションショーを繰り返し、「彼が来るならついでにネイルも行っとくか」ぐらいには心が弾む。そんな楽しみをくれそうな人。

ただ、付き合いたいかというとそうでもないというか、全ては彼次第というか。彼はなんだかいつも老若男女に囲まれ、肩には野良猫まで乗せてそうな、消極的人たらしだと思う。石田純一的とでもいうのか、すべての人間に対して優しいので、自分に向かう好意が特別強いものと差別化が確信できなければ、女性からはアプローチしづらい。どこへ行ってもモッテモテだと思うので、全ては彼次第だ。彼が情熱を持って表現しさえすれば、一瞬で幸せになれる。

もうここは開き直って、一大ハレムを築くのもいいんじゃないだろうか。彼の何を知っている訳でもないが、人間性に期待のできる男性はとても希少なので、この際皆で仲良くシェアするのもいいんじゃないか。カスを掴むぐらいなら、0.1早瀬氏でいいような気がする。

彼の一番いいところ=人間力

横山竜之介氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

印象がなく、コメントなしです。

彼の一番いいところ=?

高橋航大氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

個人的に苦手なタイプだ。とにかく光の入らない目と顔圧が怖い。「目が笑っていない」とはまさに彼のこと。

妙な例え話になるが、仮に彼があと一歩で池に落ちそうでも、私は「池に落ちるよ」とは呼びかけない。指摘すると「何故そう思ったのか根拠を述べろ。俺はまだ落ちていないじゃないか。高貴なる我の時間ロスについてお前は弁償できるのか」とか言われそうだからである。

そんな偏見を持ってしまうほど、彼の顔圧と「自分が正しい」と信じ切っていそうな表情が怖い。だから私は、そっと彼が池ポチャするのを見届け、「大丈夫ですか?」と心配する体の第三者としてタオルを差し出す。なぜタオルを用意していたかの理由は絶対吐かない。

大きなお世話のクソバイスだし、決して彼に落ち度がある訳ではないが、彼はもう少し自分が相手からどう見えるかという客観視を獲得して、表情コントロールを学んだほうがいいと思う。笑わない目であそこまで正直すぎる表情は、攻撃的であるとさえ感じる。学生の身分を離れると苦労しそうだ。多分、彼が女性に生まれていたら、この表情のままで成長することは許されなかっただろうと思う。必ず幼い頃から「柔らかく微笑みなさい」などのジェンダーロールに従った躾が施されただろう。女性でこの手の表情をする人間は殆ど見かけない。

彼の一番いいところ=真っ直ぐさ

澤井一希氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

個人的に苦手なタイプだ。登場シーンでバチェロレッテをロックオンしながら、一度も目をそらさずに迫ってくるところが最凶にホラーだ。また、カクテルパーティで大声で叫ぶ様子も無作法で怖い。

彼はとても身長が高いので、座って話すことを特に留意していないと、男女関係なく相手は居心地が悪いと思う。

そして、みたらし団子を乗せた皿を持つ角度がおかしい。ハンカチで拭いていたし、手の平で団子を抑えていたのだろうと思う。コロナ禍での撮影なのに、こんなに雑なリスクを犯す人間は信用できない。

彼の一番いいところ=無邪気さ

山邊玲音氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

ダンスでの登場シーンも鮮やかで、彼の前でバチェロレッテはいつもリラックスしていて、よく健闘している。ただ、どうも気の合う友達になってしまいそうな雰囲気だ。

epi03の飛び込みシーンが良かった。崖からの飛び込みをキャンセルする者が2名続いた後、おそらく、バチェロレッテが楽しいと思って企画したアクティビティを不発に終わらせないために、彼は間髪入れずに楽しそうに一番に飛び込んだのだと思う。

尻込みしてしまうような一番手を引き受けて場を盛り上げ、後に続く者を怖がらせない。そしてそれを周りに悟らせないところが、とても素敵な配慮だと思った。頭が良くないとこんな立ち回りは普通できない。

彼の一番いいところ=優しさ、温かさ

美留町恭兵氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

PVでの媚び顔と笑い声を自分で足す感じが苦手だと思っていたが、本編では意外と健闘している。

出会いのシーンのイラストのポージングが良かった。バチェロレッテが堂々と胸を張るポーズはとてもカッコよく、彼女へのエールになっただろう。

彼の一番いいところ=穏やかな口調

佐藤マクファーレン優樹氏

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

見る度に印象が変わり、なかなか掴めない。

カクテルパーティでジェイデン氏や澤井氏をけしかける様子からは、海外ルーツというキャラ被りを潰す戦略的な意図をも感じる。

そして、彼が本当に優しいだけならば、epi02のカクテルパーティで、バチェロレッテにツーショットの選択を迫ったりはしないのではないだろうか。

一番気になるのは、epi03のサップ時の彼の行動だ。自分の女だとマーキングするかのような接触とまとわりつきは、第三者からするとホラーでしかない。一緒にサップを楽しもうとするでもなく、その時間の全てを捧げられることは居心地が悪く「ひとりで冒険したいからほっといてくれ」と言いたくなってしまうが、当のバチェロレッテは喜んでいるのだから分からない。マジか・・・もしかして、長女・社長ポジションで庇護に飢えているのだろうか。

バチェロレッテは知らないくせに決めつけられるのが嫌だと言っていたが、一人ではサップが楽しめない前提で全力サポートされることは気にならないのだろうか。彼はいつか彼女を閉じ込め、彼女から広い世界を奪ってしまうような気がする。

一応釘を差しておくと、通常のサークルなどで彼のような行為をする者がいた場合、女性はかなり迷惑だ。彼氏面されて、うっかり周囲に誤解されてしまおうものなら、追い込み漁と同じで抜け出しにくくなるし、絶対に止めてほしい。

彼の一番いいところ=まっすぐに愛を伝えるところ

愛は利用される

さて、「真実の愛」というキーワードが跋扈するキラキラしいバチェロレッテの世界を堪能した訳だが、少し夢のない話もしておきたい。「愛」は人類史上最も利用されてきたイデオロギーだ。

「仕事を辞めたくないわ」と言えば「僕より仕事が大切?僕を愛していないの?」と言われる。「名字を変えたくないわ」と言えば「結婚より自分の名字が大事?僕を愛していないの?」と言われる。「この社会で子供を産みたくないわ」と言えば「愛の結晶より自分の人生が大事?僕を愛していないの?」と言われる。

違う違う違う。私はあなたを愛している。そして、仕事を愛し、自分のアイデンティティである名字を愛し、自分の人生を愛している。これらは矛盾しない。そうだろ?

どうして二者択一なんだ。まず皆で前提を、現行制度の正当性を疑おう。どちらも欲しいのは欲張りじゃない。あなたが幸せになるために「全部欲しい」と言っていい。社会を変えよう。

男女の雇用差別・賃金格差をなくそう。僕は君を愛しているから。選択的夫婦別姓を実現させよう。僕は君を愛しているから。子育てしやすい社会に変えよう。僕は君を愛しているから。なぜ、こう言えないのか。言えないのは、あなたが一方的に利益を享受するマジョリティだからではないのか。現状維持を望む己の仄暗さや怠惰と正面から向き合え。

そして、これは女性だけの話ではない。家父長制に愛を組み込むと最悪なことになる。「戦争に行きたくない」と言えば「国家を愛していないのか?」と言われる時代が目前に迫っている。週末に控える参院選はその瀬戸際だ。日本は今、時代を100年遡り戦前に回帰しようとしている。政治家を雇っているのは主権者である我々国民だ。私達のために働かず不幸にするだけの無能な政治家の首は切ろう。

我々は無力ではない。25%が動けば世界は変わる。変えよう。愛する者のために世界を変えよう。

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※画像は全て、Amazonプライム・ビデオ公式とWarner Bros. International Television Productionより拝借しています。