リアリティショー

バチェロレッテ3 #00

はじめに

1年に1回でも記事を書けば、私はブロガー。すっかりWordpress(WEB編集するやつ)の使い方を忘れているので、本編が始まる前に助走がてらリハビリしてみようと思う。

まぁ、私は油断していたのである。「バチェロレッテ3はオリンピック終わった後やろ」と高を括り、「それまでには記事の1本ぐらい書いとるやろ、余裕余裕」と未来の自分に丸投げしていた。結果、この1年何ひとつ書かなかったわけだが、ブロガーなんてものは所詮自称、「頭のなかでは書いてたもん」とシャーシャーと開き直っていく所存です。それでは前夜祭盛り上がっていきましょう。

高まる期待

シリーズ全体を通して、今回のバチェロレッテ3に一番ワクワクしているかもしれない。表情が豊かでロジカルな女性が織りなすショーはきっと見応えがある。

なんだかウキウキして、バチェロレッテ&こぶた、バチェロレッテ&ラス1をAI画像生成で占ってみたりもした。見てくれ、この幸せそうなこぶたを!

12秒の悲劇

出演者の発表を受けてバチェ界隈はにわかに活気づき、推し活と妄想が繰り広げられている。焼き肉の煙だけで妄想ステーキ食ってるバチェ民、エコや。

PVを視聴した段階では「いろんな人おるな」ぐらいの感想しかなく、推しを作るでも予想するでもない私は特にすることもないので、Xのアイコンや背景を変えたりと、自分なりにウキウキしながら配信を待っている。例外はバチェロレッテ・シーズン2ぐらいで、当時はアンケートを読んだ瞬間に撃ち抜かれてしまったのだ。

あれは、2年前の七夕の夜だった。「ああ、ようやく彦星に会え・・・た・・・?」と見守っていたら、あっという間のローズセレモニー。彦星はろくに言葉を発することもなく、綺羅星と共に消えたのである。

どんなに推し活をしても、ウキウキと配信日を待っていても、残念ながら初回落ちは必ず数名出る。衝撃に備えるんだ。

まずは、「もったいない、もったいない。ああ、もったいない」とぼやきながら、初回落ちの方々を振り返ってみたい。

バチェラー・シーズン1(2017.02) 5名/25名

(C)2016 Warner Bros. International Television Production Limited. Allrights reserved.(C)YD Creation All rights reserved
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(左から順に)沙倉しずか氏、山本沙樹氏、南野カイリ氏

(C)2016 Warner Bros. International Television Production Limited. Allrights reserved.(C)YD Creation All rights reserved
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(左から順に)辻川可奈子氏、西村えりか氏

バチェラー・シーズン2(2018.05) 5名/20名

(C)2017 Warner Bros. International Television Production Limited. All rights reserved.
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(左から順に)加藤優花氏、上野彩氏、城戸梨沙氏

(C)2017 Warner Bros. International Television Production Limited. All rights reserved.
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(左から順に)瀬口美乃氏、田中響子氏

バチェラー・シーズン3(2019.09) 5名/20名

(C)2019 Warner Bros. International Television Production Limited. All rights reserved.
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(左から順に)永合弘乃氏、国分亜美氏、松木星良氏

(C)2019 Warner Bros. International Television Production Limited. All rights reserved.
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(左から順に)庄子智愉氏、佐々木あゆみ氏

バチェラー・シーズン4(2021.11) 2名/15+2名

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited
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(左から順に)市橋麗里シェーン氏、林愛美氏

バチェラー・シーズン5(2023.08)2名/16名

(C) 2023 Warner Bros. International Television Production Limited
(C) 2023 Warner Bros. International Television Production Limited

(左から順に)竹田智美氏、児玉愛里氏

バチェロレッテ・シーズン1(2020.10) 5名/17名

©2020 Warner Bros. International Television Production Limited
©2020 Warner Bros. International Television Production Limited
©2020 Warner Bros. International Television Production Limited

(左から順に)芹澤東洋氏、林完伍氏、鈴木祥友氏

©2020 Warner Bros. International Television Production Limited
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(左から順に)谷口達郎氏、楠ダニエル氏

バチェロレッテ・シーズン2(2022.07) 3名/17名

(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited
(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited
(C)2022 Warner Bros. International Television Production Limited

(左から順に)早瀬恭氏、雲母翔太氏、横山竜之介氏

推しは増えてく

改めて振り返ってみると、前半のシーズンは初回で5名も脱落している。バチェロレッテ・シーズン1に至っては、17名中の5名という、シリーズでも最強の鬼畜っぷりだ。しかし裏を返せば、「もったいないけど落とす」という行為こそが、このショーのラグジュアリー感を演出しているような気もする。

初回落ちとは過酷なものである。誠に失礼ながら、バチェラー・シーズン3以前の初回脱落者を私は覚えていなかった。そもそも視聴者も顔を覚えきれておらず、ドレスやスーツの色だけで識別していたりする時点で去るため、記憶に残らないのだ。

そんな初回落ちメンバーにも拘わらず強烈な印象が残っているのは、先述した彦星、バチェロレッテ・シーズン2の早瀬恭氏である。今回久しぶりに初回のローズセレモニーを見直したのだが、インタビューに応えようかというタイミングでブツ切りされてしまう12秒早瀬恭氏と、「なんでだろう・・・法螺貝がダメだったかなぁ・・・」という法螺貝にゲラゲラ笑ってしまった。今現在、推しが初回で去ってしまいそうで沈んでいる方もダイジョブダイジョブ。2年も経てばそりゃもう心から笑える。今となっては、当時のすごく深刻そうな表情がボディブローのように効いてくるのだ。

そして、配信を追うごとに、なんとなく全ての出演者に愛着が出てくるのも事実だ。「ああ、こういうところがあるんだなぁ」「あの表情が良かったなぁ」など、次々に発見がある。回を追う毎に推しは増え続け、最終的に箱推しになるのが通例だ。御輿を担ぐバチェ民がいる限り祭りは続く。ワッショイ!

当時、イマイチ盛り上がらないショー、書き始めてしまったレビュー、去っていった彦星と綺羅星に「やってらんねぇな!」とやさぐれる私を慰めてくれたのは、彦星のTwitterスペース配信(MC海空ちゅうとさん)だった。「あ、こりゃ声がいいわ!あ、こりゃ頭いいわ!!あ、こりゃハートもいいわ!!!」と、サピオセクシャル垂涎のコンテンツとなっているので、アーカイブが残っているうちに、是非聞いてみてほしい。

初回落ちにスポットを

初回落ちの方々は、リスクを取って出演したにも拘わらず報われない存在だが、他の出演者にはない特権もある。途中敗退者が脱落後にはしゃいでいると、「そんなに軽い想いだったのか」と捉えられてしまう可能性があるが、同じことをしていても、「初回落ちにバチェロレッテへの想いなんかあるわけないもんなぁ」が視聴者との共通認識となっているので、展開が違ってくる。世界観を壊さない範囲でショーと並行して発信できるメリットは大きい。

そういう意味で、公式座談会のゲストには初回落ちの方こそを是非招待してほしい。過去シーズンの出演者もいいのだが、個人的にはもう興味が失せているので退屈なのだ。

そして個人的に一番見たいのは、シャンおじ後日談だ。推しが消えたショーで、気を抜いて見ていると時折映り込む妖精シャンおじ。ここのところ薄味が続いているショーで私が見つけた楽しみのひとつは、シャンおじ探しだ。シーズン中に3回見つけると幸せが訪れると勝手に決めて以来、勝手に遊んでいる。暇なんよ。

初回落ちが去っていくリムジンを見送る寂しそうなシャンおじの背中や、「あのとき、エア法螺貝で何度も何度も練習する法螺貝をシャンおじは見ていたのです」というナレーションと共に切り出された未公開カットを、推しを失ったバチェ民に恵んでやる気持ちで是非作ってほしい。

すべての出演者にありがとう

自明のことなので言及したことがなかったが、私は全ての出演者を尊敬している。実名での出演という不可逆のリスクを取り、オーディションを勝ち上がり、レッドカーペットに立っていることが既に凄い。きっとあの会場は震えるほど怖くて、私のような者ではリムジンから降りることさえできないだろう。出演してくださり、本当にありがとうございます。

また、好き勝手に書いているレビューを寛容に受け止め、お目溢ししてくれている関係者の方には、まず改めて感謝を伝えたい。大目に見ていただき、ありがとうございます。

今回のレビューも、出演者への尊敬を忘れず、属性(自分では選べないもの、変えられないもの)に言及せず、思考と態度(今この瞬間にでも改めることができること)のみを批評の対象とし、ショーに限定してプライベートを扱わないと約束する。

何よりも優先して守らなければならないのは出演者の安全だ。彼らを追い詰めることがないよう、今一度視聴マナーを確認してほしい。

善意ぷよぷよ

なぜ私が、視聴者には属性ではなく、思考と態度における素敵な部分を見つけてほしいと願っているかを伝えたい。必要な文脈なのでルッキズムについて言及するのを許して欲しい。

率直に、もれなく魅力的な容姿をしている出演者たちにとって「カッコイイ!」も「可愛い!」も日常だ。多分、あんまり心に響かないし、ネット越しの褒め言葉はまともにカウントしていないだろう。「分かっとるわい」という心持ちだろうし、それぐらいの根性がなければショーへの出演は難しい。

そんな出演者たちが視聴者の反応をエゴサした時、容姿についての褒め言葉は、たとえ数百人がつぶやいていたとしても、バリエーションが少なくあまりに単調で、ぷよぷよで色が揃ったときみたいに、たった一言の「カッコイイ・可愛い」だけに収斂されてしまうのではないだろうかと思うのだ。「他に、何かないんかい」「誰か、新たな面を見つけてくれる人はいないかな」と思うんじゃないだろうか。

反対に、悪意というものには果てがなく、次から次へ湧いてくる。善意と悪意のコメントを並べてみた時、圧倒的に善意のものが多かったとしても、ひとつひとつ別角度で心を抉ってくる悪意には、都度傷ついてしまうだろう。だから、「カッコイイ」の言葉だけでは、悪意へのカウンターとして弱いということを、愛ある視聴者には知っていて欲しい。推しへの愛は観察力だ。表情ひとつ見落とさずに、これでもか!これでもか!!と貪欲に素敵な部分を探すのだ。

分人を生きる

さて、「実名で出演する重さ」について、少し真面目に考えてみたい。まずはその前段として、作家・平野啓一郎が提唱する「分人主義」について語りたい。

昨今、恋リアの出演者やMC陣による、「誰といるときの自分が好きか」という言葉を耳にしたことはないだろうか。ここしばらく立て続けにその言葉に出会い、出版から10年余の時を経て、ようやく分人が根付いてきたのだなと感じていた。

彼は言う。たったひとつの「本当の自分」など存在せず、対人関係ごとに見せる複数の顔(分人)が全て「本当の自分」であり、その複数の分人の構成比率によって個性が決定されていると。分かりやすい動画があるので、まずは視聴してみてほしい。

出演者たちは、まずは他者と差別化できそうな多少エッジの効いた分人でオーディンションに臨み、ショーの開始とともに、ある程度視聴者受けする要素を加え、バチェロレッテとの関わりを通じて、更にカスタムした分人を作り上げていくことになる。それはきっと、彼らがプライベートで家族や友人たちと過ごしている分人とは異なることだろう。

バチェラーが他のショーと異なるのは、何よりその実名使用という部分だ。実名を紹介している恋リアもあるにはあるが、出演者にはたいていニックネームが用意されていて、番組中のキャプションにおいても実名のみを使用するというのはバチェラーだけではないだろうか。私はここがポイントだと思う。

恋リア配信後に様々な世間の声を受け止める出演者たちは、ニックネームを使用していればまだ、「あれはショー用の分人(顔)だから」という心の線引きがしやすい。批判を受けようとも一応の区切りはできるだろう。しかし、バチェラー・バチェロレッテ出演者はそうはいかない。当然彼らにとっても「ショー用の分人」という部分は変わらないが、それが実名故に観客から理解されづらく、一般人に戻った後もショーとの連続性を期待され、いつまでもいつまでも実名で言及されるストレスとはいかほどのものだろうか。仮に、自分を愛しく思ってくれる家族や友人が使うのと全く同じ呼称で悪意をぶつけられたなら?それはきっとすごくすごく悲しいし苦しい。

出演者の方は、まず分人という概念を通じて、ショーの分人とプライベートの分人が別であることを強く意識して心を守っておく必要がある。そして、配信後も出演時の分人を追いかけてくる視聴者が多いだろうが、どうかそれに囚われすぎないでほしい。一貫性なんてなくていい。その時、その時でどうか伸び伸びとしていてほしいし、そんな分人が育った時、隣りにいる人こそが大切な人だ。

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出演者は孤独

ずっと前から家族回がどうもな・・・という思いがあったのだが、これは出演者を守る側面もあるのかもしれない。配信後はやたら出演者同士で絡んでいるのを目撃するが、あれは仲が良いということもあるだろうが、守秘義務のためにメンバー外へうかつに思いを吐露できない事情もあるのではないかと思う。

おそらく、彼らが「ショーの中で何があったか」を本当に聞いて欲しいのは親友だ。きっと仲良しの友達にヨシヨシしてもらいたいはずだし、それが不可能なのは実はとても苦しいのではないだろうか。そこで一応の保険となるのが家族なのかもしれない。家族回まで進んでいなかった場合はグレーではあるが、出演を了承してくれるような良好な関係であれば守秘義務に反することもそうそう起こらないだろう。でも、だからこそ親友回にして、契約に巻き込んでしまって欲しいとも思う。

つまり、出演者の心理ケアを充実させるには、守秘義務のあるバチェ履修済みの心理士を用意するか、親友を旅の中で調達するしかない。旅の前後でどのくらいケアがなされているのかは分からないが、親友宛に流用できる守秘義務の契約フォーマットを配布しておくなど、出演者を守るために更なる充実をお願いしたい。コンテンツの知名度が上がるにつれて呼び寄せる人間も多様になり、私は少し危ういものを感じている。

今回、久しぶりに分人主義の本を読み返してみて、ヒントになりそうな言葉を幾つかピックアップしたので共有したい。一冊あると、追い詰められたときや苦しいとき、対人関係にやるせなさや大きな別れを経験した時の助けになると思う。リンクを貼っておくので是非手にとってみて欲しい。

コミュニケーションが苦手だと思っている人は、その原因を相手を魅了する話術の不足に求めがちだが、むしろ、相互の分人化の失敗というところから考えてみてはどうか。

自分という人間を、複数の分人の同時進行プロジェクトのように考えるべきだ。(うまくいかない)分人と、ここにいるのが別の分人であると区別できるだけで、どれほど気が楽になるだろう。新しい人間に出会えば、また新たに分人化するという希望がある。

分人は必ず他者との相互作用で生じコントロールできない。対人の悩みの半分は他者のせいでもある。

私達は隣人の成功を喜ぶべきである。なぜなら、分人を通じて私達自身がその成功に与っているからだ。私達は、隣人の失敗に優しく手を差し伸べるべきである。なぜなら、その失敗は私達にも由来するからだ。

裏側考察「クリエイティブ座学」

最後に、私がイチオシする考察班を紹介したい。たる井たる彦さん(Xはこちらだ。撮影の様子や裏話など、プロ視点での軽快な話がとても面白い。バチェラー関連はシーズン5についての考察が全5本、あいの里やラブトランジットもあるので是非。

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※画像は全て、Amazonプライム・ビデオ公式とWarner Bros. International Television Productionより拝借しています。