はじめに
今回は、epi05-07視聴後の現実逃避レポートです。
不穏な展開となっているが、今回のショーでは久しぶりに恋する表情をじっくり見ることができたのも確かだ。「彼女がバチェロレッテに相応しいか」「定義そのものを変更する時期に来ているのでは」という議論はまた別のものとして、そんなことが吹き飛んでしまうような映像を、やや出オチ感はあったがepi04でバチェロレッテは見せてくれた。「久しぶりにええもん見た。寿命延びるわ~」と幸せな気持ちにしてくれたし、2on1会議のシーンが面白すぎたので、展開がどうあれ、おばちゃんはもう胸いっぱい。動悸も止まらないけど。
今シーズンはリスクを取ってかなりチャレンジングなことをしていると思うし、内向型・思考型の行動を観測できたのも楽しかった。この記事を書くつもりはなかったが、今回あまりにも厳しい展開なので、僭越ではあるがどうにか改善点を考えてみたい。主役を絶対に守ってほしい。あとおばちゃんの心臓も。
こぶたレポート
以下の流れで、動悸を鎮めていきたい。
1)コンテンツの画力を考察
まず過去シーズンでどれほど心の交流と名シーンがあったかを確認し、今シーズンの位置づけを確認する。
3)候補者の選定方法について考察
恋する環境を整えるために、しておくべきこと。
4)内向型・思考型の取扱説明書
基本的に猫以外の人間は不審者。それはそれはスロースターター。よーいドンで、とりあえず靴下を探すところから始まる。
1)画力を考察
最近のシーズンはひたすら薄味が続いてたが、古のシーズンはちゃんと恋をしていた。まず、シリーズ初期に視聴者を引き込んだ名シーンを振り返り、今シーズンと比較してみたい。今はもう薄味さえ懐かしい気もするが、激辛料理で口がヒリヒリしているので牛乳飲も!!
バチェ民は息吸って!!こういうときは現実逃避!!頭の片隅でトンカツを揚げながら、ひたすらキャベツの千切りをして、もう片方で美しいものをひたすら観る。とにかく過剰に頭脳を使って現実逃避!!息吸って!!吐いて!!吸って!!そう!!
バチェラー・シーズン1(2017.02)
森田紗英氏(対話なし、恋心あり)
(epi24-00:51:25)このシーズンは鶴愛佳氏の顔が一番先に思い浮かぶぐらい彼女の印象が強い。森田紗英氏が恋している表情になっていったのは覚えているのだが、特に印象的だったシーンがなく、最後のローズセレモニーで見せてくれた彼女の本気度以外はあまり覚えていない。プレゼントを返されるという鬼展開に胸が詰まるようなシーンだが、「よう頑張ったねぇ~」とおばちゃんはエア飴をあげたくなるシーンだ。
バチェラー・シーズン2(2018.05)
本シーズンは、バチェラー小柳津林太郎氏と後半組の間にしっかりとした信頼関係があり、次第に鎧を脱いでいく女性たちとの見応えあるやり取りが続く。
福良真莉果氏(対話あり、恋心あり)
(epi07-00:09:38)普段のはしゃいだ様子が消え、真剣な表情をする彼女の目にはバチェラーへの好意と信頼が現れている。
(epi07-00:12:20)ロマンティックなソファに座りながら、彼女が辛い過去について語るシーンが凄い。この頃は「お涙頂戴メソッド」が存在せず、彼女のように絞り出すように話す者が多かった。自分を知ってほしいと真っ直ぐ向かっていく姿と受け止めるバチェラーが素敵で、大好きなシーンだ。
若尾綾香氏(対話あり、恋心あり)
(epi07-00:28:22)すっかり柔らかい表情に変化して子猫のようになった彼女が、自分の弱い部分について話し、バチェラーがしっかりと受け止める。このバチェラーの目があったからこそ、彼女はきっと安心して話すことができたのだと思う。
バチェラー・シーズン3(2019.09)
なし
主役だけが恋しており、人間的な深い交流がない。
バチェラー・シーズン4(2021.11)
なし
主役だけが恋しており、人間的な深い交流がない。
バチェラー・シーズン5(2023.08)
竹下理恵氏(対話なし、恋心あり)
(epi07-00:17:16)深い交流はなかったが、愛おしそうにバチェラーを見つめる目が美しい。詳細はこちら。
バチェロレッテ・シーズン1(2020.10)
黄皓氏(対話あり、恋心なし)
(epi09-00:24:00)本シーズンは見どころだらけだが、個人的にイチオシから。向き合う覚悟を決めた福田萌子氏に「リスクマネジメント止めない?」と提案されてガチンコトークするシーンだ。やっと人間同士になって、やっと言葉が通じるシーンには一番考えさせられた。
杉田陽平氏(対話あり、恋心あり)
まずは定番、花びら(epi04-00:19:35)と林檎の樹(epi07-00:14:53)。続いて、個人的に可愛くて見直したくなるシーンが2つ。沖縄にらめっこ(epi03-00:50:00)と、台湾サプライズローズ(epi04-00:38:10)だ。
下山裕貴氏(対話あり、恋心なし)
(epi03-00:47:56)沖縄で過去の不倫について告白するシーン。彼の目がいい。二人はこの短い間でもしっかりとした対話をしている。
バチェロレッテ・シーズン2(2022.07)
なし
型をなぞるだけで、人間的な深い交流がない。
バチェロレッテ・シーズン3(2024.06)
櫛田創氏(対話あり、恋心なし)
(epi04-00:30:05)バブルの中で二人で語らうシーンが最高のコミュニケーションだった。詳細はこちら。
ボーイズ
(epi05-00:02:30)2on1会議が面白くて面白くて、大興奮だった。バチェラー・シーズン5のアレは何だったんだ・・・。シスターフッド()が、いかに表面的だったかがよく分かる。今回凄く見応えがあったし、皆カッコ良かった。私は断然論理派が好きなので、馴染みのある落ち着いた様子は安心して見ていられたし、平和的解決へと導いた全員に飴ちゃんをあげたい。
彼らの論理展開は各々キレッキレで凄く面白かったので、スピンオフ企画で、人狼かディプロマシーをやってほしい。もう知能ゲームトーナメントを開催して、バチェロレッテのデート券を獲得したら、チャララ~エンディングってことでいいんじゃないか?
結論:画力はシリーズ最高レベル
序盤で見せたバチェロレッテの表情と目で物を言うコミュニケーションや、2on1会議の様子はシリーズ最高レベルだ。恋心がありありと見て取れる様子は、こちらの気持ちまで温かく幸福にしてくれたし、建設的な議論には感銘を受けた。
epi06以降、主役の精神状態が心配になるほどの厳しい展開を迎えている。空々しい雰囲気がヒシヒシと画面から伝わり観るのもしんどいが、リアルではある。
2)主役の選定について
主役は本当に出演していただけるだけでありがたい。だからこそ、今回の展開が心苦しい。元々人材難だろうし、どんな主役が来ても対応できるようにショーを設計するしかない。
バチェロレッテには、人間性や恋愛面で成長過程の未熟な部分があったり、自分の求める形がまだ定まっていない様子も見受けられた。ホスト役不在のまま婚活感が強くなっているシリーズだが、人材不足の折、これはもう受け入れていくべきなのだろうと思う。
自己開示や表現力、他者への興味と踏み込みが不足気味なところに、確かな情報がないと動けない慎重思考型の男性陣が集まった事が現状に繋がったのかなと思う。バチェロレッテはサプライズローズに対してかなり慎重だが、これは感情のフックとなる小道具の要素もあるので、戦略的にばら撒くぐらいでも良かったのかもしれない。私なら乱発して、集団の競争を煽りスピード感を上げて、モテを無理やり作り出す。序盤にサプライズローズが出なかったために方向性がつかめず、自分をそのまま表現することなど考えてもいなさそうな思考型男性陣は、戦略が立てられなかったのではないか。彼らは傾向と対策で勝負しようとしていたと思う。
それぞれの性質なので、別に誰も悪くはないのだが、絶望的に歯車が噛み合わないし、対話、いや会話さえも成立していないように感じる。バチェロレッテの人間力から逆算すると、あまり小説のようなジャンルのエンタメを摂取していないのかなと感じる。自分の表現に対する相手のリアクションを想像する余力や、他者の気持ちを感覚的に理解し応じていくような器用さがない。恋愛経験の乏しさだけが原因ではないような気がする。相手の感情を汲み取って関係性を築いていくことは、実はかなり脳や心のリソースを食うことだし、もしこの必要性を彼女が感じないのなら、地球人では間に合わないかもしれない。
一方、デートの内容については、サファリとルーツ探りを除けば、互いを知れるようによく練られていると感じた。ゴールを友愛スタートに設定するのも凄く面白いしリアルだと思う。
主役にはそれぞれの魅力があって、それぞれの物語になって当然だ。色んなタイプの主役を見てみたいし、そこに幅があるのは豊かで良いことだと思う。人材難でもあることから、主役の選定というよりは、(3)候補者の選定方法で調整していくのが良いのではないかと思う。
3)候補者の選定について
心理的なコミットメント
バチェ民のなかから、以前のシーズンのように主役を発表して公募するという段階を踏むべきではないかという意見が出ていた。私もその意図は理解できるのだが、主役の先行発表自体はあまり現実的ではないと思う。SNS全盛期時代でもあるし、配信までにスキャンダルが出る可能性がある。また、適齢期であろう主役に課する恋愛禁止期間が長くなってしまう。そして、そのように選考しても、売名目的(そもそも全員がこれ)の強い参加者を省く方法がないし、過去シーズンでは「恋してる体」の演技力勝負のような側面もあり、本気になる人物を見抜く手段がない。
そこで私が提案したいのは、ブラインドテストだ。主役に対して、いつも候補者側で作っているようなプロモーションビデオをダミーを含めて3者分作成し、オーディションの早い段階で候補者に「どの人物に好感を持ったか」というヒアリングをしておくのはどうだろうか。なお、そのシーンを撮影しておくことで、参加者の本気度も表現できる。選考後にバチェロレッテから招待状が届くという演出を入れたりすれば、初回落ち感を緩和できる上に、両者のラポールの種にもなって更に高まるんじゃないだろうか。少なくとも「容姿がタイプ!」ということが映像から伝われば、主演を傷つけることもなくなるだろう。
何より、「自分で選んだ」という工程こそが、心理的なコミットとして影響する。旅の開始までに相手の姿を脳内で何度も何度もリピート再生し、性格を予想し、展開を妄想することで恋愛への準備をしていく。それがあってこそ初めて過度な緊張を抑制でき、積極性が出てくるというものじゃないだろうか。今は何もかもが突然すぎるし、思考型はこのスピード感では恋愛できない。
飯野和英氏がショッピングデートでやっていたように、車のセールスマンはまず「車のある生活」を想像させるようなトークをする。脳内で良い気分でイメージができたとき、初めて人は欲しくなる。まず自分で選んだという事実を作り、未来を想像させておくことで、自発的な欲求の種を作っておくことが必要ではないだろうか。
4)内向型・思考型の取扱説明書
櫛田創氏に代表される慎重な様子は、私自身も似たようなところがあるのでよく分かる。そもそも、理系は二学期に恋をする。早々に動いた少人数のカップリングが完了して、仕切り直しの二学期に、なんとなく人となりが分かってから恋愛する。
今回の理系・思考型に囲まれて女性が少数という状況は、自身の高校・大学時代とよく似ている。私はダラダラと田植えのシーンみたいなことを繰り返していた。時折軽率にパン派とデートをし、また田植えをする。今度は軽率にパスタ派の誰かとデートをして、その後また皆で田植えをする。米は作らなきゃ駄目だから。この友愛というぬるま湯は、性愛的興味をぶつけられることもなく、仲が良いと本当に気楽で楽しいので、横方向の人間関係がやたら強くなって、壊したくない気持ちが育ってしまうかもしれない。確かに米食ってる人と恋愛しようとはあまり思わなかった。
そして何より、「男+女=恋愛関係」というよりも、「人間+人間=友愛関係」が望む恋愛スタイルとして自分の中にある気がする。前者や一目惚れの経験もあるが、その場合も、いきなりパーンと最高潮に感情が高まることもない。「あ、なんかこの人好きかも」というのは、「あ、猫が道路横切った」みたいなテンションだ。どんな人か詳しく知らないから、感情がそう波打たない。猫の方がまだときめく。
私の場合は極端かもしれないが、数少ない例外を除くと理性のロックが強すぎて、感情がそう簡単に動かない。受け身でいいのなら、相手の情熱次第で恋愛関係になれる。型だけはなぞれるし、たまには豆も食べたいのでコミットできるかは分からないが軽率にデートはする。しかし、今回は本来攻めていくはずの候補者に受け身が多く、本来受け身でいい主役の警戒心が強く受容度が低かったり、攻めに転じていたりとブレ幅が大きい。
個人的に内向型や思考型の恋愛を見るのは楽しいので、これからも地味な絵面に懲りず見せて欲しい。マジョリティとマイノリティが入れ替わるのは、社会実験的な要素も加わり興味深い。そして、正直なところ、感情型・外向型の恋愛は他の恋リアや現実でいくらでも観測可能なので、今更特段、何の目新しさも感動もないというのも事実だ。
いっそ最初から、バチェロレッテにおけるゴール設定を全員で議論するという展開があってもいいのかもしれない。彼ら一人ひとりの恋愛観を聞いてみたかったし、その違いも興味深いものだっただろうと思う。