ラヴ上等
はじめに
Netflixで放映開始された恋愛リアリティショー「ラヴ上等」が最高に面白い。MEGUMIがプロデュースするという話は知っていたが、正直まったく期待していなかった。「また恋リア増えるのか。ジャンルが飽和して終わりの始まりだな」と思っていたのだが、予想は鮮やかに裏切られ、最高のヒットとなった。恋リアはもうこれだけでいい。ありがとう、MEGUMI!
葛藤
「面白い!レビュー書きたい!!」と強く思ったのだが、それを引き戻すものも自分の中にあった。魅力的な人物ばかりで、本当は気合いを入れて書きたいのだが、ウォッシングに加担してもいいのかという思いがどうしてもあった。
私には傷害事件の裁判傍聴を通して、その内容の壮絶さや被害者家族の表情を至近距離で見た経験がある。彼らにどのような過去があるか正確には知らないが、被害者が存在する場合、たとえ罪を償ったとしても、本当の意味での謝罪は生涯その生き方を変えることでしか成らない。
私自身も別に清廉潔白に生きてきた訳ではなく、それは身体的暴力ではなかったけれど、刺すつもりで人の心を言葉でえぐったことがある。人が本当に傷ついたときの顔が今でも忘れられない。「ああ、罪を犯したんだな」と思ったし、その時自分には自分の正当性があったが、自分の言葉がとても強いことを自覚していたのに、それを抑えることをしなかった凶暴性がショックだった。それは法では裁かれない事柄ではあったが、神は見ているし、何より私自身が見ていた。「謝罪って終わらないよな」というのが私の思いで、別にそれで四六時中反省文を書いている訳ではないが、「今後そのように言葉を用いない」という事を自分で決めた。何より、あの傷ついた顔が怖くて二度とやりたくない。
だから、今回のレビューは書き方を変えようと思う。レビュー中では出演者の名前を一切使用せず、それを私の境界線としたい。
あえて言うならば、それがしてきたことへの代償なのだと思う。一度信用を失うということは、場末のブロガーであっても躊躇させてしまうということだ。作品は視聴継続するだろうし番組や出演者の成功を願っているが、私は一線を引いておきたい。
パラレルワールド
映像は魅力的で、あっという間に魅了されてしまった。チョロい。
悪いことしてきたんだよね。それをどう受け取って視聴すればいいのかなぁ。でも良いところもいっぱいあるよ。私が出会ったのは過去ではなく今だしなぁ。ジャッジする立場じゃないしなぁ。
こういう複雑な感情を抱えたとき、私はいつも100のパラレルワールドを想像する。「if 彼女が暴力にあってなかったら…」「if 彼に父親がちゃんといたら…」「if 彼女がちゃんと両親に守られていたら…」
ここでひとつ言葉を共有しよう。
”金はいろんな猶予をくれる。考えるための猶予、眠るための猶予、病気になる猶予、なにかを待つための猶予。世間の多くの人は自分でその猶予を作り出す必要がないのかもしれない。ほとんどの人間には最初からある程度与えられるものなのかもしれない。”
「黄色い家」川上未映子
100のパラレルワールドのうち、70はきっと私が彼らを大好きな世界だ。愛を持って書きたい。
登場人物について
私は猫と子供が好きで、特にイヤイヤ期の子供は、親御さんは大変だろうと思うが遠目で見ている分には可愛くて仕方がない。地面に寝転んでゴネているところを見ると、「大人もそれやりたい時あるんよな~」なんて羨ましくなったりもする。
なんか、そういう感じ。ラヴ上等はそういう感じ。おばちゃんからすると皆が可愛くてしょうがない。表情がイキイキしていて、感情も関係性も目まぐるしく変わっていく。なんだか猫や幼稚園児を見ているような温かい気持ちになるのだ。
表現力
私は、いわゆるヤンキーというのは、言葉が足りないから暴力が出るんだろうぐらいに考えていた。放映前の期待値が低かったのは、「オラオラ!」「オラ~~~!」「オラッ!オラッ!!」みたいな会話になるのだろうと勝手に思っていたせいでもある。これは間違った偏見であったと反省せねばなるまい。
蓋を開けてみると、彼らの言葉は直接的でしっかりしていて、加えて表情がとても雄弁なので何を言いたいかがしっかり伝わってくる。すっごいコミュニケーションだなぁ~とずっと感心しているのだ。
恋愛時間軸と体力
ラブ上等は展開スピードがとにかく早く、日替わりで恋する相手が変わっていく。私はこういう複数の男女がいる恋リアは、関係が複雑になりすぎて疲れてしまうのであまり得意ではないのだが、そんな心配はなかった。表情を見れば分かるし、彼らの気持ちがどんどん変わっていってしまうので、恋心の履歴を把握しておく必要さえないのだ。面白すぎる。
とにかく彼らは今を生きていて、いいと思ったら、いいと思うのだ。これが自分だったら、石橋のノックはあと999回残ってますけど?みたいな感じなんだが、とにかくいいと思ったら、いいようなのだ。凄い。
総じて見ていると、彼らは体力的に恵まれていて、恋愛時間軸がすごく短いのだと思う。何事もそうだと思うが、体力優位な者はトライ&エラーの高速回転ができるという強みがある。自身の感覚に自信があり、その感情を疑わない。その瞬発力はスポーツ選手並だ。
好きなシーン
epi#02 [00:25:40~] インタビュー(女性)
「好きなのかな…わかんないよ、好きなのかな…?えっ恋しちゃってる感じ?」おばちゃんは萌え死ぬかと思いました。こんな可愛い女の子いる??
epi#03 [00:17:00~] 男子転校生が来るシーン
この緊張感、猫が間合いをはかってるみたいで面白すぎて、声を出してゲラゲラ笑ってしまった。いや~面白かった。大好きなシーン。
epi#03 [00:31:45~] たこ焼きタックル
もう全部が最高で笑いが止まらない。ろれつの回らない黒服もいいし、タックルに至るまでの猫が攻撃しかけるみたいな白服の様子も可愛かったし、インタビューで「まあほんとにまずいんですけどね」と応えるところもチャーミングだった。ニタニタ笑うの癖になるな。
epi#04 [00:37:00~] インタビュー(女性)
「好きなんだと思うんですけど、素直になれないんで嫌いです」学生時代の友達を見ているようで、可愛らしくて愛おしい。
惹きつけられた表情
epi#01 [00:13:40~] 恋に落ちる瞬間
じぃーーーとただその人だけを見つめる目。
epi#01 [00:29:20~] 女性が過去について話すシーン(2名)
格闘技を習うきっかけになった過去について、聞き入る黒服男性の表情がいい。あれは痛みを理解している目だ。話を続ける彼女を見つめる目がとてもいい。
別の女性が暴力を受けた過去について話したときの、黒服男性2名の表情に涙が出そうだった。この映像は彼女のお守りになると思う。ああいう目をしてくれる友達がいることは財産。
epi#04 [00:08:00~] ショーダンス(女性)
え…女神さま…??妖艶で超然とした微笑み。こういう表情をする方はちょっと思い当たらない。すごい誘引力だ。映画のオファーが来るんじゃないだろうか。男性陣が惚けてしまっていたが、気持ちは分かる。私もポーッとしてしまった。
epi#04 [00:10:00~] ガン飛ばし(女性)
この一連の流れはまったく肯定的ではないのだが、こういう表情を人生の中でしたことがあるだろうか。良い子ぶりっ子するわけではないのだが、私が仮にムカ着火ファイヤーしてもこの表情は反射で出てこないので、凄いなぁとシンプルに思う。
人と衝突したときの対応は様々だろうが、私は相手が私を失うことが一番の損失だろうと思っているので、最終的には去るという見方を変えるとヘタレな選択を取ることが多いのだが、実行するまでには場合によっては何年もの猶予がある。とくに指摘もしないので、その間にどんどん失点を重ねる人もいて、舐められタイムが継続してしまうことがママあるのだが、初手で衝突しておくのも大切なことなんだろうなと思った。それだけ。
epi#04 [00:27:00~] 女子転校生が来るシーン
画面の右側に配置されている女性2名の表情がリアルだ。胡散臭い和解について疑念があるのだろうと思う。関係性が出来上がっている中に後から入ろうとするなら、転校生の選択は和解に応じるしかない訳で、それを理解しているからこその気づかうような表情だったと思う。両者とも繊細だし、観察力が高い。いい目をしていて優しい人やね。
印象に残ったシーン以外でも、皆本当に表情が豊かだし、何が起こるか予測不能すぎて観ていてワクワクする。来週の配信を釈迦寝で待ちたい。
恋リア戦国時代
「ラブ上等」の詳細なコンテンツ分析を別途noteで有料公開しています。完全に作り手を対象者としたフィードバック内容となっています。

