レビュー

書籍「かがみの孤城」/辻村 深月

【書評】★★★★☆(78点)

この本を薦めたい方

学校のことで悩んでいる子供や、そんなお子さんに悩んでいる親御さんは一度読んでみてもいいかもしれません。日本の教育機関に馴染めないのは、内向型傾向が強いのかもしれません。そのような方は、読書が苦痛ではないでしょうし、このファンタジーはサクッと読めて読後感も良いです。

親御さんについては、子供のナイーブな部分が描かれているので、自分にもこのような感性があったと思い起こしていただくのもいいですし、もし仮に、そんなことを感じたことがなかったと思われるのでしたら、それは危険信号です。あなたは子供と向き合うために、繊細な者の感性を今確認しておくべきです。そういう意味で学問書でもなく読みやすいでしょう。

大切だと感じたところ

明確なポイントはないのですが、主人公が自分で物事を判断し始める段階があります。これが人生において、大人も子供も最も重要なことだと思います。みんな、自分の人生を生きればよいのです。自分で決めたことは信じられます。自分が大切だと思うものを大切に、また、その感性を必ず守り抜いてください。

雑感

本の内容とは離れますが、実際のところ、フリースクールに通う子供はおそらく増え続けているんだろうなと思うし、むしろまっとうで健全な子供だと思う。

今の社会の有り様や学校教育に早い段階で疑問を持つ子供は、はっきりいって将来性がピカイチだと思う。ただ、親がそれを理解するほどには進んでいないかもしれない。現在の親世代は微妙なお年頃だ。

自分が受けた教育と社会の変容、そして、旧態依然とした会社で働いていたりして判断がブレる。また、閉塞感のある村社会ジャパンで、我が子のいわゆる「人と違う」ことを喜べる親は少ない。単純に不安なのだろう。

この問には出口がなく、それぞれの家族がそれぞれのタイミングで誠実に選択を繰り返すしかないと思うけれど、では救いがないのかというとそうでもない。悩んでいる君は、今の自分をただ信じていればよいと思う。自分を疑う必要はない。そして、周囲に理解を求める必要がないことに気づいていてほしい。

そうすれば、後することはひとつ、時期を待つだけだ。自立できるタイミングまで、君は刃を研ぎながら時期を待てばいい。できることはたくさんあるはずだし、飛ぶと決めたらやることが一杯にならない?