リアリティショー

バチェラー4 #01

はじめに

リアリティ・ショーのレビュー記事はもう書かないつもりだったが、黄皓氏が出演するならバチェロレッテ1.5のつもりで書いてみようかと思い、ちょっと前準備をしていた。

しかし、蓋を開けてみると「なんだこりゃ」感が強い。このコンテンツを面白いと感じる人は少ないんじゃないだろうか。交わされる会話もしょうもなくペラッペラで、全般的にすごく退屈だ。視聴のメインターゲットは女性なのか、水着目当ての男性なのかさえ分からない。正直、完走できる自信がない。オワコン化しつつあったバチェラーシリーズに、とうとう黄皓氏がとどめを刺すんじゃないだろうか。

とは言え、パーティ会場に乗り込むボート映像には爆笑させてもらった。なんだあの舟の配列は。戦闘開始なのか。法螺貝の音が聞こえた気がしたぞ。そうそうペインティングが残ったままの決め顔インタビューも爆笑できてよかった。だが海は汚すな。

今回は移動がなく連泊なのか、出演者のまとまり感がこれまでとは異なる感じだ。数人がいつも周囲を気にかけていて、どちらかというとこれをもっと映してほしい。途中で2人を投入したのは、波風を立ててドラマを作りたかったのかもしれないが、早々にこれも解消されていて、結局何がしたかったのかよくわからない。まぁ、制作陣もテコ入れの必要性は感じているんだろう。

今回のレビューでは、本編ではたいした見所もないと思うので、気になるトピックについて深堀りしたり、様々な視点の洗い出し、思考実験による遊びなどを織り交ぜながら伴走してみたい。まぁ、なんか適当にいい感じに言ってみたが、要するに前回以上に脱線ばっかするぞという宣言だ。騙されて来たピュアな読者にはご愁傷さまだ。すまんな。

ジョー・ミリオネア

のっけからちょっと脱線してみたい。私がバチェラーシリーズを観るようになったきっかけは、2003年に北米で放送された「ジョー・ミリオネア」だ。現在のバチェラースタイルと同じなのだが、この仕掛けが凄かった。工事現場で働く巨万の富とは縁のない男性に、乗馬や所作のレッスンを受けさせ、ミリオネアに偽装させてからがショーの始まりだ。もちろん女性陣は何も知らされないままフランスの古城に集められている。

海外版にMCはおらず、自前メイクやドレスの取り合いなど舞台裏もしっかり見せてくれる。これが私が初めて観たリアリティ・ショーであり、めちゃくちゃ面白かった。今でもこのジャンルの最高傑作だと思っているので、気になる方は視聴してみてほしい。

思えば、2000年代は北米でのリアリティ・ショー全盛期だった。当時SNSはまだなく、視聴者による暴力的な発信もなかった。街は一面ジョー・ミリオネアの広告で埋め尽くされ、後に「Mr.パーソナリティ」など、バチェロレッテの男性陣が皆仮面を付けている(爆笑)ものなど、色んなバージョンが放送され迷走もしていた。

比べてしまうと、周回遅れで輸入された日本のバチェラーシリーズはやはり物足りない。衣装やメイクさえ、どこまで提供やプロが入っているのかもよくわからない。カクテルパーティーの衣装は提供とプロによる着付けだろうが、個人的にはパーソナルカラーを推測しながら「あの衣装や色は誰が選んだんだろう」なんてことを考えているので、メイクシーンや舞台裏は結構見たいのだ。出演者自身のセンスを知りたい。

ドレス格差

バチェロレッテにおいては、黄皓氏が最後に着ていたドラえもんスーツぐらいしか覚えていないが、バチェラーシリーズのカクテルパーティーにおけるドレスは、以前から結構格差があるなと感じていた。その前に関連するパーソナルカラーについて簡単に説明しておきたい。

パーソナルカラー

パーソナルカラー(PC)とは、人が生まれ持った髪・瞳・肌と調和して似合う色のことで、一般的には4分類(春夏秋冬)となっており、メイク用品などは少し単純化した2分類(イエローベース・ブルーベース)で示されたりする。パーソナルカラーの洋服やメイクを身に付けると、その色を反射し融合した肌や瞳が輝き、より魅力を引き立ててくれる。日焼けや加齢では変化しないものとされていて、診断はプロがドレープを使いかなり細かく見ていく。メニューによって数万円かかるが診断は一生モノだ。

誰もが4分類の春夏秋冬にピタッと当てはまるわけではなく、あくまでも便宜上の分類といったところで、私も冬がメインで夏の色もちょっといけるという混ざり具合だ。自分にあったパーソナルカラーの服をまとうと、印象が深くなるというのか、全体の雰囲気がピタッとハマるなぁといつも思う。

まぁ、初めて聞いた方は胡散臭いと思うかもしれないが、メガネと口紅の色だけはパーソナルカラーを外さない方がいいと思うので、迷ったときにでも参考にしてみてほしい。

私は人を見るときに、その印象を色付けして重ねていく癖がある。そして、ファッションを含めた全体の色彩と調和具合で記憶に残す。情報量が減ってしまうので、この時点では実はあまり言語化しない。

似合うものを用意されている人物

特筆すべきは、松木星良氏と休井美郷氏だ。彼女たちのドレスはほとんどの場合、似合う色とデザインが用意されていた。 松木星良氏のPCサマーで統一された装いは上品で、彼女の雰囲気と完全に一致している。シルバーアクセサリーの映えも凄い。会社経営者なら着る機会もありそうなので、もしかしたら自前なのかもしれない。2話のドレスは黒がやや重く感じたが、PC夏タイプが黒を着るならいいデザインだと思う。少し雰囲気が変わり目を引いた。

一方、休井美郷氏のドレスも、デザイン・色彩ともに彼女の柔らかく可愛らしい雰囲気にとてもマッチしていて、魅力を拡張するかのような効果がある。ただ、2話の黒のドレスだけは色に負けていた。

彼女達はとてもメイクさんに愛されているのだろうと思う。サイズや色かぶりを加味すると、ドレスの選択肢が如何ほどかは分からないが、最優先で割り当てられているのではないか。きっとデザインから着る人物がスッと思い浮かぶのだろう。あれらのドレスは他の者が着るところを想像できない。

その本人にしか着られないと言えば、2話の白川理桜氏の緑がかった水色と金のドレスもとてもよく彼女の魅力を引き出していた。あの色はかなり難しく、誰でも着られるものではない。普通の者なら色に負けてしまうだろう。

次点で美しく着こなしていたのが嘉瀬美月氏だ。彼女のドレスや私服の赤が微妙にPC冬の赤ではなかったが、口紅と全体の雰囲気がハマり彼女の印象を拡張するような効果があった。あの表面積の赤を纏えるのはPCウインターの彼女しかいない。

罰ゲームのようなドレス

一方、ドレス争奪戦に負けたのかと勘ぐってしまうような人達もいた。1話の藤原望未氏の紫のドレスは、何か他になかったのか。色もデザインもまるで彼女の良さを引き出していない。水着を着込んでいる関係でタイトなデザインの選択肢がなかったのかもしれないが、あまりに酷い。

2話の桑原茉萌氏の黒のドレスも可哀想になるくらい色に着られてしまっている。彼女に黒は無理だ。1話目のドレスも微妙だったし、デート服にしても、とにかく色がとっちらかっている。

舞台裏が見たい

実際には無理だろうと思うが、映画「ハンガーゲーム」のように、リアルタイムで推しメンに衣装の差し入れができたらいいのになと思う。ドレスは人生でそれほど着る機会がないものだし、せっかくなので最高の装いで魅力を引き出してほしい。ヘアメイクとの二人三脚ぶりを見せてしまうとか、お助けマンなんかのラッキーアイテム制度があっても良さそうだ。もはや別の番組になりそうだが、今回本当にドレスぐらいしか見どころがないのだ。

リアリティ・ショーで描かれるもの

さて、前回のバチェロレッテのレビューについて、私は伝えたいことを書くために黄皓氏を利用したとネタバレ回で白状した。大切なことなので再度書いておきたい。書き手には必ず視点がある。私は嘘や思っていないことは書かないが、ある点を強調して書くこともできるし、ある部分を描写しないこともできる。物事は多面的で、常に両論を併記するのが理想なのかもしれないが、それでは読ませる文章にはならない。私はその時点において、確度が高いと思われる方向へ倒して文章を書くが、わずかな疑いが残っていないわけでもない。

動画の編集についても同じことが言える。人が介在する以上、編集には必ず意図がある。定点カメラ映像の垂れ流しでは物語にならない。そもそものカメラアングルからして意図がある。なぜその数人だけがフレームインしているのか、枠外で何が起こっているか、そんなことを考えながら見るのも面白い。

バチェラーシリーズに関してはキリがないので疑っていないが、動画の編集というものは、特にバラエティ番組などは、その時系列さえ疑う余地がある。下品な話題の後に挿入されている笑顔が、その時系列で発生しているとは限らない。編集は何とでもできる。まぁ、これらは編集倫理の問題だしそうそう起こらないだろうが、可能性を知っておくのが大切だ。

そして忘れてはならないのが、日本版バチェラーにおける謎のMCの存在だ。これが個人的には一番気持ち悪い。端的に不要である。彼らは適当に総括してしまいがちで、放送直後には影響を受けた者による、意見をなぞるような発言がSNSに溢れる。私はこのMCによる世論のコントロール感と視聴者のヒステリー的な一斉反応がとても怖い。

今回余裕があれば、ぜひ意見が奇妙に統一されていく過程をウォッチしてみてほしい。かなりキモくておすすめだ。

人間は多面体

よく裏表、二重人格などと表現されるが、人間は二面どころではなく多面体だ。ニュース番組などで、故人や犯人の人物像についてインタビューに答える映像を、私はあまり信用していない。家族でもない知人レベルの人間が、深いところまで理解できているとは到底思えない。エピソードの客観的事実ではなく、主観による印象を語る知人レベルには要注意だ。そもそもの審美眼に全くの担保がない。

リアリティ・ショーの短い映像のなかで表現されているのは、どうしたって彼らの一部分だ。とは言え、我々の日常にしてみても、相手の数年をじっくり観察して対応するということなどはできない。限られた時間で見切りをつけて判断し対応するのが常だ。そして、私がここで書く人物評については、その程度のものであるということだ。情報が全然足りないし、リアルな人間関係において、私がたったこれだけの情報でジャッジすることはない。ここから先の人物雑感については、そのことを踏まえて読んでいただけたらと思う。

人物雑感

全般的に印象の乏しい人物が多く、脱線ばかりしていたらそろそろ書くのも飽きてきて、この記事を投げ出そうかと思うくらい言葉にならない。バチェロレッテ記事で筆がのったのは、やはり主役の成熟による出演者の照り返しによるところが大きい。残念だが、黄皓氏のペラッペラな会話では深い人物像が浮かび上がってこない。しょうがないので、今回は淡々といってみたいと思う。

黄皓 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

全体的な印象はバチェロレッテ出演時とあまり変わらない。今回は彼がどのように自分を開放していくのかに注目している。

彼はとても頭のいい人で、周囲の意図を自動で察知してしまうのだろう。バチェラーとしての振る舞いにもそれが現れていて、その期待に応える気持ちが枷にならなければいいなと思う。

彼のなかには、常に1カメ、2カメ、3カメがあるような感じで、まず客観視がずば抜けているのに加えて、鉄の自制心と仮面を持っている。なんとなく「今引いたな」という場面がいくつかあったのだが、瞬時に目の表情をコントロールしていて流石だ。あの速さで瞳からマイナス要素の感情を取り除くのは、日常的にやっていないとまずできない。彼は気遣いの人だ。相手に気づかれない前にやる。方言コピーは少々うざいが、誰にでも対応できるカメレオンのような接待力は素直に凄いなぁと感心する。

全般的に自分を奮い立たせて頑張っている者にはとても優しい目をしており、1話目で最後のローズを渡す直前の落ち着きのない手には緊張が表れていた。これが彼本来の繊細で素敵な部分だろうと思うが、彼が今回バチェラーで塗り替えたいイメージは、それと一致しているだろうか。

なんとなくだが、彼はプライドの回復のために、ホモソーシャル向けに「イケてる俺」像をアピールしてしまわないだろうか。心のままに動いているならまだいいが、コンテンツとしての面白さを追求してしまったり、前回以上に求められた役割を演じてしまわないだろうか、少し心配だ。

心をさらけ出すことは弱さではない。むしろ出せないことに臆病さを私は感じる。心を表すことは勇気がいるが、それを乗り越え受け入れられたとき、得も言われぬ喜びが胸を貫く。そんな素敵な体験をたくさんしてほしい。

あと、同意があるなら、成人同士がどんな夜を重ねようが好きにすればいいと思うが、あの女性陣の関係性を見る限り、彼の態度によっては、きっとサイズやスキル情報は共有されちゃうけど耐えられそうか?

しかし、「バチェラー=リッチ+イケメン」みたいな構図は、もはや視聴者の心を掴めないような気がする。コロナ禍とバチェロレッテの放送を機に人々の価値観に大きな変化が起こっている。「で?社会に向けて何を表現したいの?社会に対してあなたは何をしているの?」という問を彼に向けてみたくなる。なんつーか、ここでしっかり自分とも向き合わなければ、黄皓氏はそのうち堀江やDaiGo界隈の勘違いした新自由主義の申し子みたいになってしまうんじゃないかという予感さえある。まぁ、とにかく彼は選び切るだろう。

最後に、彼におすすめの話題図書、「実力も運のうち 能力主義は正義か?(マイケル・サンデル)」を貼っておく。

青山明香里 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

ワイルドクッキングとぶっきらぼうな口調、そして仁王立ちが印象的だ。一緒にキャンプに行きたい。

ここまで率直だと黄皓氏はやりやすいだろうが、いかんせん知性の物足りなさがネックになり、早々に放流されそうだ。彼女は人数調整の狭間にいる。

彼女の一番いいところ=素直さ、豪快さ

休井美郷 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

個人的には小物感があってスルーしがちなタイプだ。所作の一つ一つが作為的だが、もったり動くのが面倒くさくなったりしないんだろうか。人生の一体何の足しになるのか分からんけど、まぁ努力できるの凄いな。

彼女の一番いいところ=正面きって敵をつくらないバランス感覚

中野綾香 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

3話目でようやく顔を覚えたほどの印象の薄さだったが、まさかのダークホースっぷりにたまげた。私自身は彼女を脅威とは見抜けないタイプだ。どうにも目が滑ってしまって視界に入ってこない。

彼女の一番いいところ=楽しいゲームができそうな柔らかい雰囲気

嘉瀬美月 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

彼女は眉毛から表情を動かしていて、日本人にしてはちょっと珍しい。自信もあり、こういうことをやっているという事象は説明できるが、自分の感情を含む内面や思想については表現できていなかったように思う。女性の友人に出会えたことが、彼女にとって一番の収穫ではないだろうか。

彼女の一番いいところ=自分だけに集中しているところ

藤原望未 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

黄皓氏が1対1で直接称賛を伝える分には関係上ギリOKだと思うが、彼が出会いのシーンでルッキズムのつぶやきを連発していたのは少し残念だった。歴代バチェラー1と3も第一印象でファイナルアンサーなので、彼女の顔が好きならかなり強いカードと言えるし、大ポカがなければ、ファイナリストの1人かもしれない。

個人的に気になったのは、彼女の語尾の雑さだ。しっかりと音を完結させない一辺倒な話し方が気になる。常に一歩引いてしまうような彼女が、今後自らアピールするのは大変そうだが、バチェラーはそれをどう受け止めるだろうか。ルッキズムは全てに勝るのか見てみたい。

また、1話のカクテルパーティーでの「(黄皓氏と秋倉諒子氏の接近を)誰かが止めないと」と嘉瀬美月氏に目線で水を向けたずるさが気になった。嘉瀬美月氏はいいように使われがちなタイプに見えるので、女性陣の中でおもちゃにされてなければいいなと思う。

一方、「嘉瀬美月氏はサプライズローズをもらえないだろう会議」において、彼女は不用意には発言せず戸惑った表情で追随で愛想笑いのみをしていた。全員で一人を槍玉に挙げるような会話には加担せず、とてもまともな人だと思う。

彼女の一番いいところ=普通の感覚を持っているところ

白川理桜 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

事前にPVを観たときは随分トリッキーで痛枠かという印象だったが、本編では意外と健闘している。登場シーンも鮮やかで、衣装とメイクによる七変化ぶりが凄く、何度か「誰だこの人」と分からないことがあった。

恋愛をしたことがないというのは、時にコンプレックスになるものかもしれないが、初々しい彼女の姿はとても可愛らしく、本人以外は誰も気にしていないだろう。まずは恋愛にこだわらず、黄皓氏と向き合うのがいい経験になると思う。今回見守りたい蕾は彼女だ。

黄皓氏も彼女に対してはとても優しい目をしていて、無下には扱わなそうだ。完璧な表情筋を持つ彼との出会いは安定感があり、ちょうど良かったんじゃないだろうか。

彼女がそうだというわけではないが、世の中には恋愛感情のないアセクシャル・アロマンティックという存在もいる。エンタメで常に恋愛描写が出てくることに違和感がある者も多い。恋をしないことは別におかしなことではない。このあたりはテーマ性が大きいので、また別途機会があれば書きたいと思う。

そして、デートの準備をするルームメイトの中野綾香氏のために手鏡をかざすシーンには、なんとも温かい気持ちになった。

彼女の一番いいところ=精一杯挑戦しようとしているところ

小口桃子 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

「みんなで話そう」と提案していたり、バチェラーのスピード感に最もついて行けなかったように思える。バイオリズムが全く合わないと思うので、早い敗退で良かったのではないだろうか。

2話のカクテルパーティーの髪型と緑のドレス、金のイヤリングがとっても似合っていて素敵だった。

彼女の一番いいところ=ナイーブさ

秋倉諒子 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

プロフィール写真をざっと見たとき、私は彼女の意思の強い目に惹きつけられた。その後PV、本編を見て、印象が統一されていたのは彼女だけだ。なんとも小気味よく真っ直ぐだ。

1話で彼女がプールに飛び込んだシーンが良かった。絶妙のタイミングだ。運とスポットライトが向こうからやってくるような存在の強さを感じる。

友人枠である彼女は、黄皓氏にとって過酷な旅において背中を預けられるような存在かもしれない。なんとなくだが、彼女を傷つけたくないため、彼女が本気になりそうな気配を出すと放流しそうな気がする。

彼女の一番いいところ=真っ直ぐな存在感

清水香澄 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

彼女はカクテルパーティーで楽しめていない者を気にしていたり、目配りとサービス精神の行き届いた人だなと感じた。バチェラーを尻目に、無邪気にポージングしている姿は可愛くて笑ってしまった。彼女が嫌いな人間を見る目線はちょっと正直すぎるが、彼女がいると場がぱっと明るくなりどうにも憎めない。これは天性のものだ。

彼女の一番いいところ=太陽っぷり

林愛美 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

まぁ、まずその手を下ろせ。どれだけ口を隠したら気が済むんだ。他にも休井美郷氏など、同様の仕草をする者がいるが、この所作は日本女性特有のもので、国際的にはかなり奇っ怪に映る。詳しく調べたことはないが、お歯黒など女性が歯を出して笑うのを許さない背景には、日本のミソジニー文化が関連しているのだろうと思う。

これは見ていて気になりだすと止まらないので、早めにやめたほうがいい。どうでもいいクソバイスだが、くしゃみと鼻すすりも、かなり意識しないとやめられない国際的アウト仕草なので同時に気をつけたい。

彼女の一番いいところ=?

松本妃奈子 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

この方はちょっと面白い。まるでフィールドワークをしに来ているような俯瞰で全体を見ているようであり、少女のように感情豊かに表現もする。

とにかく目端が利いていて感心する。カクテルパーティーでの突然のダンスに拍手をして空気を丸めたり、涙を拭ったり、背を押したりしていた。水上相撲では水没者を救助していたり、嘉瀬美月氏のヒョウ柄ドレスデートを全員で笑っていた場面では「失礼」だとたしなめ、「ローズをもらえないでしょう乾杯」にも参加していない。

なんとなくだが、彼女はそれとは知られぬ体で、大外で全体の空気感を調節している感がある。女性陣のまとまり感の立役者はきっと彼女だ。

彼女の一番いいところ=360度視野と豊かな感情表現

市橋麗里シェーン 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

印象がなく、コメントなしです。

彼女の一番いいところ=?

坂入みずき 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

大切な質問も、自己表現もできて頼もしい。ダンスをもっと見てみたい。

彼女は語尾までしっかり発音し、特に子音が美しい。キュッと結ばれる音が心地よく、また聞いてみたいと思わせる声だ。

しかし、今後は黄皓氏のペースについていけるのか微妙だ。横に並ぶ姿もあまり想像できないし、しっくりこない。

彼女の一番いいところ=自分のペースを保っているところ

松木星良 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

ルールと過酷さを熟知しているはずの彼女の混乱具合が腑に落ちないが、思惑が交錯する空間にこれ以上耐えられないというメンタル限界を迎えたという事なのかもしれない。

もともとの優しさからなのか、周囲に目配りしていたら、いつの間にかアシストしながら自滅しており、少々何しに来たんだ的な不器用さだ。

常に似合うものを纏っている装いからは、とても自己理解が深いように思われるのに、行動がチグハグなのは不思議だ。

彼女の一番いいところ=センス

桑原茉萌 氏

(C) 2021 Warner Bros. International Television Production Limited

プロフィール写真をざっと見たとき、フォトジェニックというのか、彼女の表情が一番いいと思った。が、PVや本編で動画を見るとかなり印象が異なった。動くとやはり彼女は幼く、髪色はともかく、全体における存在は割と地味で、目立つことをしているから目立つだけで、あまり目は行かない。

こう言っては何だが、彼女は賑やかし要員でもあり、コンテンツに華を添える。放流は中盤以降といったところではないだろうか。

少し不安定になりつつあり、面倒に感じ始めている彼女の放流タイミングで、黄皓氏がコンテンツとしての面白さを追求するのか、人として尊重して向き合うつもりなのかを見極めることができそうだ。キスは見せ場作りと「うまく踊れ」という燃料投下だろう。

彼女の一番いいところ=最初からフルスロットルなところ

木下マリア 氏

ネフェルティティ並のストレートネックに緊張と疲れが出ているようで心配だ。直後に映り込んだ鍼灸師も「針打ちたいわ」と思っているような気がした。知らんけど。

彼女はとても堂々としており、年齢にそぐわないほどの落ち着きと貫禄がある。ゆったりと瞬きする表情も魅力的だ。バチェラーと対等に渡り合う姿は頼もしく、振られた理由を聞き、さらに思いを伝える強さも尊敬する。しかし、バチェラーはプライドを傷つけた者を絶対に残さないだろう。あのとき黄皓氏からは怒りのオーラが出ていたし、結構傷ついた目をしていた。彼女をもっと見ていたかったので残念だ。

彼女の一番いいところ=媚びずに意思を伝えられるところ

李起林 氏

リラックスして自己表現できており、二回目の余裕を感じる。すんなり溶け込んでいて、頭もよさそうだし、バランス感覚が優れているんだろうと思う。

彼女の一番いいところ=自然体で余計な力が入っていないところ

結婚制度について考えてみる

バチェラーの建前は一応結婚前提なので、今回はその制度について少し触れてみたい。

さて、唐突だが、史上最悪のツアーコンダクターといえば、ご存知モーセである。彼はイスラエルの民を引き連れてエジプトを脱した後、40年間もシナイ半島の荒野をさまよわせ、不十分な水と食料で過酷なキャンピング生活をさせた。その後、約束の地カナンを目前にして、一度だけ神に背いたモーセも、神を信じず不平不満を口にしたツアー参加者と共にその生涯を終えることとなる。神はエジプト脱出を経験した第一世代の彼らが死に絶え、世代交代が完了するのを待ってカナンに到着させた。ここで注目したいのは、世代交代を待つためにかけた40年という歳月のことだ。

人類は農耕を開始することで、資産や権力の形成・保存・継承が可能となった。それにまつわる重要な仕組みの発明が婚姻である。つまり、婚姻とは、人の生涯サイクルが40年である頃に確立された制度ということである。

人生は長くなった。100年ともなった生涯に、たった20余年を生殖期間とする人類が、性愛だけを軸に婚姻制度を維持していけるのだろうか。そして、性的欲求・恋愛感情自体を持たないノンセクシャル・アセクシャル・アロマンティックなどのセクシャルマイノリティを排除し続ける現行制度のままで良いのだろうか。

現在同性婚については理解がかなり進んでいるが、社会の成熟とともに包摂する必要があるのは、彼らのような存在も同じだ。現行制度は全く彼らに寄り添おうとせず、性的欲求や恋愛感情の有無によって、永遠に一人で生きろと言い続けているようなものだ。婚姻制度は今後、友愛関係も包摂するようなパートナーシップ制度・概念に進化する必要があるだろう。

同性婚

さて、アジアの優等生である台湾がアジア初の同性婚合法化を成立させたのは2019.5月である。初年度に登録した同性カップルは総数=4,021組、うち女性同士は2,773組(69%)、男性同士は1,248組(31%)である。次年度は同性カップルの離婚も増えたが、男女カップル数の差は似たような比率であったと記憶している。

同性婚を実現すると、女性同士のカップルが有意に増える。これは結構パンチの効いた男性優位・家父長制社会へのNOだと思う。アジアの劣等生ヘルジャパンにおいて、違憲状態が解消され、同性婚と選択的夫婦別姓が実現するのはいつになるのかわからないが、きっと同じことが起こるだろう。同性婚が実現し、韓国のように若い世代が英語を獲得して世界と隔絶されている言語障壁がなくなれば、もはや日本人男性は選ばれなくなる可能性も高い。

そんな世界を目前に、日本でこんなバチェラー像を見せていて大丈夫なのだろうか。今回は、かなりの女性が冷めた目で見つめているだろうと思う。私はずっと人には見せられないほどの白け顔で視聴している。

おすすめドラマ

侍女の物語(シーズン1~4)

さて、長くなってしまったが、今回婚姻制度について書いたので、関連のあるドラマをおすすめしておく。残念ながらアマプラではなくHuluなのだが、初回は無料期間もあるので、最新シーズン4まで出揃った最高のタイミングである今、是非視聴してみてほしい。夢中になって貪るように見れると思う。バチェラーつまんないんし、こっち見ようぜ!

これは男性絶対優位の独裁体制が敷かれたディストピアを描いた物語で、地獄は一体何番底まであるんだろうと思わされる。現実離れした描かれ方をしているようで、しかし、ふと現代に通じると感じる部分もあり、女性という存在について深く考えるきっかけになるドラマだ。

全く救いがない舞台設定にかなり重苦しく感じると思うが、そのうち希望の描写もある。作品の完成度も高く面白いので是非頑張って視聴してみてほしい。脳と胸にガツンと来る。

バチェラーでゆるゆる脳になったところで視聴すると、多少バランスとれていいんじゃないだろうか。知らんけど。

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https://www.youtube.com/watch?v=LHUDszG7n4Y&t=5s
※画像は全て、Amazonプライム・ビデオ公式とWarner Bros. International Television Productionより拝借しています。